近くにいた子供の声が、「ケンカだ、ケンカだ」と言っていたので、僕も妻もほとんど同時にため息をついた。


「やめましょう」


「やめよう」


「どうせ私たちは、もう終わりなんだから」


「そうだね。僕のせいだ」


「別にそこまで言ってないわ」


「いいや、僕が悪いんだ。5年前のあの日、僕はキミを誘わなければよかったんだ。キミの電話越しでの態度を察して、すぐに電話を切ればよかったんだ」


「そんなこと言ったら私だってそう。そもそもあなたの誘いに乗らなければよかったのよ。そしたらきっと、こんなことには……」


「もうやめよう」


「そうね、やめましょう」