「本当にそう思ったのよ。でもあなたってば、水槽を見向きもしないで、スタスタ歩いていこうとするんだもの」


「そうだったっけ」


「そうよ。でも、今思えばあの時からもう違ってたのかもしれないわね」


「違ってた?」


「合わないってことよ。あなたと私は」


「ああ、うん、多分そうだと思う」


僕は自分の足のつま先に視線を落とした。


「あの時、気づいていればよかったのよ。もし気づいていればこんなことにはならなかったと思うわ」


「たしかに、もしキミが気づいていれば、こんなことにはならなかっただろうな」


「また、私のせいにするの?」


「そうじゃないさ。でも、とは思う」


「やっぱり私のせいにしてるじゃない。あなたっていつもそう」


「そうじゃないってば」