「よし。送ったからもう大丈夫」

「本当にありがとう」

「さっきからありがとうしか言ってないよ、佐伯(さえき)さん」

「えっ……？」


フワッとやわらかく微笑んだ神宮寺君。

今……私の名前を呼んだ？


「え、なん……」


何で知っているのかと聞こうとした時だった。

ヒューッと高い音がした後、ドーンと地響きのような大きな音が鳴り、空を明るく照らした。

それを筆頭に次々と色とりどりの花火が、真っ暗な夜空に打ちあがる。


「綺麗……」

「え、めちゃめちゃ綺麗！なんか、得した気分」


神宮寺君は花火を見上げて、小さな子どものようにはしゃぐ。

その姿を見て、カッコいいだけじゃなくて意外とかわいい部分もあるのだなという事を知る。


「俺、流れ星みたいに、打ち上げ花火に願い事しちゃうんだよね」

「そうなの？」

「だって、何か叶いそうじゃない？」

「言われてみたら、確かに……」

「佐伯さんなら、何を願う？」


私なら……？