学校の近くに、かなり大きな神社があって今日はそのお祭りの日。

最後に花火が上がるし、割と有名なお祭りだから毎年のように大盛況らしい。

人混みが苦手だし、元々、ここに来るつもりは全くなかった。

だけど部活が終わると、美術部メンバーみんなで行こうという話になり、盛り上がってる中、私だけ帰るとも言い出せなくて。

握りしめていたスマホをカバンに入れて、とりあえず人の流れとは逆の駅の方へと歩みを進める。

こんな事になるのなら、雰囲気に流されないで言えばよかった。

行き交う人はどの人も楽しそう。

きっと私だけ真逆の気持ちで、この場には異質な存在だと思う。

早くこの場から抜け出したいのに、思うように前に進めない。


「大丈夫?」


その時、声と同時に右腕を強い力で掴まれた。

不意に顔を上げると、そこにいたのは隣のクラスの神宮寺君がいて、ハッと思わず息を飲んでしまう。

神宮寺君が何で私の腕を掴んでいるんだろう……?

突然の事で頭の中がグチャグチャで、状況整理ができない。


「とりあえず、人混み抜けるよ」


凝視したまま何も答えない私を神宮寺君は手を引いて、人混みの中から連れ出してくれた。