「今年は迷子にならないでね」

「へっ?!」

「去年の花火大会で迷子になって、この世の終わりみたいな顔してたでしょ?」


……覚えててくれたの?

神宮寺君にとっては何でもない日の事なのに。


「……その節は大変ご迷惑をおかけいたしました」

「いやいや。……ちょっと、余計な事しちゃったかなとかずっと考えてたんだよね」

「え?」


余計な事……?

全然、そんな事ないのに。


「あの日以来、同じクラスになるまでしゃべらなかったじゃん?だから避けられてるのかと思ってた」

「えっ?だって、しゃべる機会なかったし……」

「隣りのクラスだけど、意外と顔を合わさない日って多いもんなんだね」

「うん……まあ、そうだね」


神宮寺君の周りにはいつも人がいるから、廊下ですれ違ったとしても私に気付いてなかったと思うよ。