「あ、待って……っ!」


私の声はざわつく人混みの中に飲み込まれて消えていく。

金魚すくいの水槽を涼しそうだなと眺めていたら、すでにみんなは移動し始めていて。

気付いた時には、人の波に押し流されて、みんなとはぐれてしまった。

雑踏の中、露店の明かりはあるけれど日が暮れていて遠くまでは見渡せない。

よく知っている場所なのに、まるで知らない場所に迷い込んでしまったように急激に不安が沸き上がり、心細くなる。

運の悪いことに、スマホもバッテリー切れを起こして、誰とも連絡を取れない。

とりあえずみんなが進んだほうに進む?

だけど、奥に行けば行くほど人の数は多いし、これから花火も上がるから更に人が増える。

そんな中で、みんなの姿を見つける自信が私にはない。


「来なければよかった……」


ポツリと誰にも聞こえないほど小さな声で呟く。