「ありがとうございます!じゃあ…何が食べたいですか?」
「え、えっと…」
何が食べたい…か、正直お昼から何も口に入れていないからお腹は空いていた。まさかこんな展開で食べるとは思っていなかったけれど…
祭り会場にあって、できるだけ値段は控えめで、無難なものといえばなんだろう…?
頭を悩ませる私をじっと見つめて、お腹は空いてないなら、と付けたよすように
「…別に、食べ物以外でも良いんですけど、お姉さんのこの後のデートで勘違いされるとまずいんで、、」
と彼は言う。
…
…ん?
「そ、そそんな!デートじゃないですよ!」
少し間を置いてやっと理解した私は慌てて否定した。すると彼は目を見開いて「え…?!」とわかりやすい驚きの反応を見せる。
1人でお祭りの雰囲気を味わいにきただけだ、と言えばと、瞬きを数回繰り返し今度は視線を泳がせて"考えてます"と言いたげな表情に変わった。
…こうもわかりやすい反応をしてくれるなんて、この人よっぽど素直なんだろうなぁ。
「こんな綺麗な姿してるから、てっきり彼氏と待ち合わせでもしてるのかと…」
「綺麗なんてそんな。むしろ、この場所にそぐわないし帰ろうと考えていたぐらいですよ」
「…そぐわない、お姉さんが…?」
さっきほど暗い気持ちではなかったけれど、きっとここに居たってまた悲しい気持ちになるだけ。
未練がないかと言われれば、ないと言い切れるわけじゃないけど、花火は家からも見えるし、神社への参拝もした。
「祭りの空気感も味わえましたし」
特に用事もないので、そう伝えようと彼に視線をやる。
なのになぜ、?
彼の真剣な表情が目に映り、どういうわけか上手く音にならず、そのまま言葉を飲み込んだ。
「今日、フリーってことですか?」
「…っ」
フリー、ひとりぼっちもそういってみれば聞こえがいい。
「そ、うです」
「なら…
1日、俺に夢見させてくれませんか?」