「なんかすみません、俺が不注意なばかりに」
「いえ、私も同じ段差で躓いちゃったし」
通りから少し外れた石段。いつもカバンに常備している絆創膏を彼の膝に貼る。傷口を刺激しないように慎重に…
「はい、できましたよ!」
「ありがとうございます」
赤茶色の髪、背丈は私より少し高く、羨ましいほどのぱっちり二重。シンプルな白のTシャツで見た限り、私と同じ高校生だろう。
この人もデートかな…?それとも友達と?
…なんて考えたところで意味はないけれど、
照れくさそうに頬をかく彼を見て、誰かの役に立てたのなら良かったのかも、と心が安らぐ。
「そうだ、お礼になんか奢らせてください!」
…え、
「そ、そんな気にしないでください!」
「いえ、せっかくのご縁ですし」
「でも…」
まさかのお誘いだった。
このままお別れだと思ってたのに…
「こんな不恰好に転んだところを助けてもらって、何無しにさよならなんて俺の気が済まないですよ」
お願いします、と付け足して目尻を下げる彼にこれ以上断ることはできなくて、頷く以外私に選択の余地はなかった。