『だからあれほど走るなと言っただろう!』
蘇るお父さんの声。初めて浴衣を着た日、嬉しくて辺りを駆け回って派手に転んだことがあった。

懐かしいけれど、嫌な思い出だ。
それ以降、浴衣は禁止されて普段着で参加するようになった。


それから数年、



『あんな浮かれた空間にいかなければよかった』
これは去年の記憶。昨年訪れた花火大会で父は気分を悪くしたらしいのだ。その日をキッカケに浴衣どころか祭りさえも家のカレンダーから消えた。


今回の花火大会だって例外ではなかった。
友達に誘われて断って、話を出せばダメだと一刀両断される花火大会。

それでも、花火だけは参加したい。


そう意気込んで来たこの日、

いざ来てみれば
大切な花飾りは落とすし、人混みを避けながら下を向いて、落ちた花を探して足は挫いて。

降り注ぐ現実と眩しすぎるこの空間で感じる自分の惨めさはあまりにも辛いものだった。


…やっぱりダメだったのかも。



なんて、だめだ。
また悪い考えをしている。