『彩ちゃん!今度みんなで遊園地に行かない?』
『うん、行きたい!親に聞いてみるね』
『あのねお母さん、今度友達と遊園地に行きたいの』
『あら、楽しそうね。もちろんいい』
『ダメだ』
『お、お父さん…』
どこを提案してもお父さんはダメだと言った
『ちょっと買い物に行ってくるね』
『彩、スーパーなら車に乗りなさい。送ってやるから』
『で、でも』
『お父さんも手伝うし、外は物騒だからな」
優しい愛情を感じるたびに息苦しさを感じた。
拒むことは相手の愛を無下にするのだと言い聞かせ、自分の意思を閉じ込めていく
そうしていたら、自分のやりたいことなんてどうでも良くなった。
何か起こるたびに、どこかへ行けなくなって
それでも仕方なかったんだ、危険だから。
…だけど、
『…花火、見たいな』
それだけは抑えられなかった。
またいつか、と言い聞かせても頭に鳴り響く轟音が。
家からじゃ感じれないあたりを包むような眩さが。
何度だって記憶の中に蘇り、頭の中で開花する。
お父さんが仕事に行く間を狙って、浴衣をおばあちゃんに着付けてらった。
何も知らないおばあちゃんは、「友達とお祭りかい?」なんて素敵な響きを口にするからそうだよと言って花火大会のチラシを見せてあげる。
そして、時間通り到着したバスに飛び乗った。
思えばそれが、私の夢の始まりだったのかもしれない。