「っ!」
背後から聞こえた聞き馴染みのある怒鳴り声に心臓が早鐘を打つ。
「彩…?」
握ったその手に力を込めて彼に小さく助けを送る。そんな私に気づいた彼は静かに立ち上がり、声のする方を見据えて私の手を強く握り返してくれた。
「こんな時間まで何をしているんだ!」
お父さんだ。
「…お父さ」
「それになんだ。こんな、祭りに浮かれた空間で男を見つけるとは」
だんだん近づいてくるその声に現実へ引き戻されていく感覚が私を襲う。
「違う、彼は」
「今すぐ帰ってこい」
「待って」
「ダメだ」
頑固として、譲らない父に。
大切に想ってくれている父に…
「全く、何度言えばわかるんだ。あれほど浮かれた場所には1人で行くなと言っているのに何故ここへ来た?」
「…」
「去年、おかしなヤツらに声をかけられて気分を害されたのを忘れたのか?今年からは行かない、ってそういう約束だっただろう?」
「あの時って、私が食べてたフルーツ飴の屋台を聞かれただけじゃない!そのことをお父さん勘違いしてるだけで…!」
「その気の緩みがダメだと言っているんだ」
っ…
嘘偽りない事実を述べたところで、頑なに信じようとしないお父さんの前じゃ呆気なく風に吹き消されるのみ。
「大体お前はいつも意思がないんだ。周りに合わせてばかり、もっとしっかりしろと何度も…」
…夢は夢でしかない。
大切にされてる。
わかってる。
だからって、どこにも行けない、何も出来ないなんて
そんなの…愛されてるって、思えないよ。