「無理だってわかってる、こんな事言っちゃダメだってこともわかってる」
「なのにどうしよう」
「夢から覚めたくない」
「このまま攫ってしまいたい」
「このままこの夢に閉じ込めてしまいたい」
「…これからも」
「傍にいてほしい」
「っ…」
次々と紡がれていく彼の言葉は暗闇の中へと消えていく。
我儘だよな、と頭につけた仮面で顔を隠し、握られた手の力も緩むから、一気に彼の心情が読み取れなくなった。
1日を通してこんなに弱々しい彼を見たのは初めて。
…だけど、代わりに、心の中で見つけた一つの感情が確かなものになるのを感じた。
心が締め付けられて、私も同じだと言いたくて
掴まれていたはずの手で彼の手を握った。
この夢が覚めなければいいんだ。
彼の言葉に頷いたら、この夢は現実の夢になるかもしれない。
祭り会場の夢じゃなくて、もっと広い海みたいな夢。
檻じゃない愛を、譲れない愛情を。
まだ彼と見続けたい。きっと私は
花火のような夢で、彼に恋をしたんだ。
『俺が保証しとくよ、今日彩が祭りに来たのは間違いじゃないって』
『俺今マジで譲りたくない』
『1日、俺に夢見させてくれませんか?』
…
「…日向くん、私」
「彩!」