綺麗だったね、すごかったね
口々に感想を呟きながら来場者たちは会場の入り口へと戻っていく。

私はまだ、心に余韻として打ち上がる花火に魅了されて動けずのままでいる。
まだ、この夢から覚めたくないのだと、心に花火の続きを描いている。


視界に映りきらないほどの大きな花が、

振動を感じるほどに轟いた大きな光が





……だけど




「…終わっちゃったね」





それが許される時間も長くはない





「そう、だな。終わっちまった」





この関係も終わるのだ。







「…日向くんはどっち方面に帰るの?」

「俺は、駅の方」

「…そ、っか」



反対方向だ、小さな期待は砕け散る。
でもまだ、話したいことはたくさんあるはず

彼を引き止めるべく、思考を回し話題を探す。



「…ここに長居したら彩のバスがなくなる。出口まで行こう」


「……うん」


だけど、この沈黙が和らいだところで何も変わらないんだ。

淡々と前をいく彼に本当にもう終わりなのだと実感する。私には勿体無いほどの夢だった。
おみくじに書かれた吉が今日を指すなら
一体何を基準にしているのか確かめたくなるほどの大吉だ。




爽快を味わったラムネの屋台も、
愛想のいいおじさんのいるかき氷屋も

帰りはあっという間に通り過ぎていく。



前方にお祭り会場の入り口が、



…いや、祭り会場の出口が。
大勢の来場者たちに囲まれ、夜の暗闇を照らして佇んでいた。



もう、祭りに未練はない。充分すぎるほど満喫した。充分すぎるほどお腹も心も満たされた。


…ならどうして