◯田辺家・ゆうみの部屋 (夜)

ベッドの上に寝転がりスマホでSNSを確認するゆうみ。

スマホの画面『アカウント検索欄:沢田りょう
         アカウントは見つかりません』

ゆうみ「SNSやってないのかな〜。って、何で私あいつのこと考えてるんだ」

机の上の教科書やノートに目をやる。
片足でケンケンしながら机に向かい、ノートを開く。
ノートの最後のページに目をやる。

ノートの最後のページ『俺の前で寝るな。キスしたくなる』

ゆうみ「うわっ(ノートを上に投げる)」

ゆうみ母の声「ゆうみ、大丈夫?」
ゆうみ「う、うん。何でもない」

ゆうみM「(顔を赤ながら)も〜何これ」

落ちているノートを拾い上げ、胸の前で持ちながらベッドに仰向けになるゆうみ。

◯田辺家・ゆうみの部屋(日替わり・朝)

目が覚めるゆうみ。

ゆうみ「やばっ、もうこんな時間」

枕元の時計は、朝の7時45分を指す。
ベッドに座りながら着替えをするゆうみ。

◯田辺家・玄関(同)

ゆうみ「行って来ま〜す」

ゆうみの母がリビングから出てくる。

母「そういえばさっき私が洗濯物干してる時、背の高い男の子が声かけてきたわよ」
ゆうみ「背の高い男の子…?」
母「そうそう、ゆうみのとこの制服着た子。ゆうみがもう学校行ったか聞いて来たわよ」

ゆうみの妹がリビングから顔を出す。

妹「え?お姉ちゃんの彼氏!?」
ゆうみ「彼氏なんていないわ!」
母「でも彼、すっごくイケメンだった」

背の高いイケメンの男子高校生と聞いて、りょうのことを思い浮かべるゆうみ。

ゆうみM「(頭を振りながら)いやいや、だって私の家とか知らないはずだし」

妹「え〜いいなぁ。でも、お姉ちゃんバスケのことしか考えられない脳筋だし、彼氏なはずないよね〜」
ゆうみ「脳筋は失礼だから!」
ゆうみ「って、やばいやばい。じゃあ、行ってくるから〜」
母と妹「行ってらっしゃ〜い」

◯田辺家・玄関外(同)

ドアを開け、家を出ていくゆうみ。

ゆうみ「…え?何で?」

ゆうみの目の前には本を読んでいるりょうの姿。

りょう「遅いな」
ゆうみ「何でうちの目の前にいんの」
りょう「だって俺の家、隣だし」
ゆうみ「え?」

ゆうみ、隣の家の表札を見る。
表札には、沢田と書かれている。

ゆうみ「うっそ…」
りょう「早くしねーと遅刻だから」

ゆうみM「まじか!よりよってお隣さんなのこいつ!」

ゆうみとりょう、2人で並んで歩き始める。

◯通学路(同)

ゆうみ「てか、何で私のこと待ってたわけ?」
りょう「別に」

ため息をつくゆうみ。

ゆうみ「何でノートにあんなこと書いたわけ!?何なの!」
りょう「そっちが寝言で言うからだろ」
ゆうみ「え?なに、寝言って」
りょう「キス…って寝言で言ってたから」
ゆうみ「(恥ずかしくなり顔を赤くして)うそっ。私が…?」

恥ずかしくなり、口数が減るゆうみ。
ゆうみとりょう、何も話さずに2人で歩く。

◯図書室(放課後)

図書室へ入ってくるゆうみ。
誰もいない図書室。

ゆうみ「まだいないのか…」
女子生徒の声「ねぇ…」
ゆうみ「あ、誰かいる」

図書室の中を見渡しながら歩くゆうみ。
本棚の隙間から見える、男子生徒と女子生徒の影。

ゆうみ「うわ〜。なんか取り込み中か、これ。気まず〜」

気になるゆうみ、本棚の隙間から様子を伺う。

ゆうみ「…え?うそ」

本棚の奥で、りょうと女子生徒がキスしているところを目撃するゆうみ。