小学校生活最後のクラス替えで仲の良かった友達全員とクラスが離れ、ひとりぼっちだったあたしに遠慮なく「お前、友達とクラス離れてぼっち?」と聞いてきたあの日からあたしの初恋は始まっていたのかもしれない








「朝陽〜!!早く起きなさい!!遅刻するわよ!」
朝からビックリマークの多い母は大変だ。
入学式早々遅刻しそうな娘を叩き起こさなければいけないから。

「はーい」
あたしの間延びした声が気に食わなかったらしい。
母の機嫌は最高潮に悪い。





重い身体を無理矢理起こし、朝の支度に取り掛かる。



準備が終わりリビングに行くと忙しそうにお弁当を作る母と呑気に食後のティータイムを楽しんでいる妹いた。


妹はあたしを見るなり眉を寄せて
「お姉ちゃんがいつまでもそんなにだらしないからお母さんが朝から不機嫌になるんだよ。」と文句を言ってくる。



妹のそんな小言に構っているほど時間はない。


お皿に丁寧に置かれているトーストを口に詰め込んで家を出る。



散歩している犬も驚くぐらい速く走る。そうじゃないと間に合わないから。あたしだって入学式から遅刻は御免だ。


学校の玄関に滑り込むとそれに気づいた友達の岡崎 (おかざき ゆい)が苦笑しながら近づいて来る。


「朝陽、今日も相変わらず寝坊?もうクラス貼り出されてるよ。教頭がクラスみたら体育館に移動しろって。」


「結は教えてくんないの?あたしやだよ、あんな人だかりの中クラス見るの。」
あたしが口を尖らせて言うと

「私だって頑張ってクラス確認したんだから朝陽も頑張んなよ。」となんとも無情なことを言ってくる。




「ちぇー。」
渋々、クラス表を見に行くと人が多すぎてちょっと前に進んだと思ったら後ろに押し返されることの繰り返し。


やっとの思いでクラス表に自分の名前を見つけると同じクラスの上の方には結の名前があった。


結の元に戻ると結いが「高校1年目で朝陽と同じクラスだったら安心だわー」と呟いた。


結とは小学生の頃から仲の良いいわゆる親友ってやつだ。


結が思い出したようにあたしに言った。
「朝陽の名前の下に瀬那くんの名前あったよ。」
「えっ。マジ?!全然見てなかった…」
「初恋なんでしょ。しかも今もずっと好きなくせに気づいてなかったの?ほんと呆れる。」
「だって自分の名前と結の名前確認するので精一杯だったし、まさか高校同じだとは思わないじゃん!」



あたしが今でもずっと引きずっている初恋相手の宮野 瀬那(みやの せ|漢字《かんじ)な》とは中学校が違う。
あたしは中学校を結と一緒に受験して女子校に行ったせど、瀬那は地元の中学校に行ったから小学校を卒業してそれぞれ違う学校に通うことになるとそれまで毎日話していたのが嘘のように会うことはなくなった。
それでもあたしの中の初恋は消えないまま高校生になってしまった。


そんな初恋の相手かまさか同じ高校を受験していたとは夢にも思わないじゃん!!

一気に押し寄せる緊張で心臓が潰れちゃいそう