○昼・仁子の家
仁子M「唯一の肉親に蒸発されて」
仁子M「絶賛、貧乏一人暮らし中の女子高校生・美甘仁子(みかもにこ)」
仁子M「王子様を飼ってます」
ふたりでちゃぶ台を囲んでお昼ごはん中。
照 「今日もご主人様のごはんおいしいねー」
照 「余計な具材がない分、小麦粉とソースの味が引き立っているよ」キラキラ
照 「こんな高尚なレシピがあるだなんて! 専属シェフにもおしえてあげたい!」
仁子 (ただの素焼きそばです、ごめんなさいっ!)
仁子 「ごちそうさまでした!」
両手を合わせたのち、
食べ終わった仁子は「ふぅ」と息をついてから立ち上がる。
照も息をつく仁子をしっかり見ている。
仁子 「それじゃあ、お買い物に行ってきますね」
照 「俺も行くよ」
仁子 「えっ?」
照 「俺、お役立ちペットを目指しているから」にっこり
〇近所のショッピングセンター・食品コーナー
照 「これ美味しそうだね」
照 「あ、果物も食べたい」
仁子 (このボンボンが!)
ポンポンと籠に食材を入れていく照。
仁子はイライラを必死に押し殺す。
仁子 「照くん。悪いんだけど、うち、お金が……」
照 「今日はステーキが食べたい――」
最高級ステーキ肉に手を伸ばした照。
照の手を仁子はぐっと掴む。仁子の顔は般若。
仁子 「おいこら御曹司」
仁子 「おんどれ、私のペットになったんでしょ?」
照 「はい……」
仁子 「庶民の財布事情を覚えんかーいっ!!」
仁子の説教に、照はしおしお。いじいじ。
照 「でも俺、ご主人様と美味しいお肉が食べたくて……」
仁子 「そういうことなら――」
仁子、格安半額ステーキ肉をとる。
シーンチェンジ。仁子の家。
超高速でお肉を包丁でたたく仁子。たまねぎをみじん切りにする仁子。
ジュウジュウと焼く仁子。うしろから照が覗き込んでいる。
シャリアピンステーキの完成!
ステーキを食べた照、おめめキラキラ。
照 「すごいよ、ご主人様!」
照 「三ツ星レストランと同じ味がする!」
仁子 「さすがにそれほどでは」まんざらでもない
仁子 「それじゃあ、私はバイトに行ってきますので」
荷物をとり、家を出ようとする仁子。だけど少し疲れている様子。
照 「俺、今日中にネームを完成させるから!」
照 「帰ってきたら、読んで感想聞かせて?」
照 「絶対に、賞金三百万円をご主人様にプレゼントするからね!」にっこり
苦笑した仁子、家を出る。
手を振って見送った照は、表情が真顔に。
照 「ねぇ、俺が気が付いてないと思ってる?」
照 「お肉、一枚しかないじゃん」
照 「俺、いっしょに食べたいって言ったのに」
照、部屋でだらしなく座って、部屋を見渡す。
照 (家には必要最低限のものしかない)
照 (俺が世話になってから、毎日バイト)
照 (たぶん、食うにも困ってる)
照 「そもそも、クラスメイトとはいえ」
照 「一人暮らしの家に男を住まわせるなんて、不用心だよなぁ……」
照 (俺が言えることじゃないけど……)
照 「変な子」しみじみ。
照 「男の意地とか、張ってられないじゃん」顔が見えないように。
○夜・近所のコンビニ
品だしもレジ打ちも、キビキビ働く仁子。
客が切れたとき、店長が仁子に声をかけてくる。
店長 「いや、ほんと美甘さんがいてくれて助かってるよ~」
店長 「卒業後はどう? うちで正社員するってのは」
仁子 「あはは……」苦笑い
店長 「まぁ、イマドキの子は大学に行くのが普通だけどね」
店長 「美甘さん真面目そうだし。すんごい大学行くんだろうな~」
店長 「じゃ、おれは裏で作業してくるから」
店長 「お店、よろしくね」
仁子 「わかりましたー」
店長がバックヤードに下がり、一息つく仁子。
仁子 (将来かぁ……)
仁子 (本当は大学にも憧れるけど……)
仁子 (ま、うちの経済状況じゃ、就職が妥当だよね)
現実を目の当たりにして、余計に疲れがでる仁子。
仁子 (なんか疲れちゃった)
仁子 (でも、もうすぐ上がりの時間だ)
仁子 (今日はどんな廃棄弁当が残ってるかな~)ほやほや
すると、面倒そうな酔ったおっさんに絡まれる。
オッサン 「よぉ、姉ちゃん。暇そうじゃねーか」
オッサン 「一杯付き合わねーか?」
仁子 (まったく、疲れているときに限って……)
仁子 (そういう仕事じゃないんだが?)
仁子 「すみません、私、未成年なもので……」
オッサン 「いいじゃねーか。お堅いことは抜きにしよーぜ」
やんわり断ろうとしても、仁子はカウンター越しに腕を引かれる。
仁子 (どうしよう……店長はバックヤードだ……)
戸惑う仁子をよそに、オッサンはどんどん顔を近づけてくる。
オッサン 「おれ、知ってるぜ?」
オッサン 「イマドキの子は、姉ちゃんのような地味な子ほど裏で遊んでんだろ?」
オッサン 「おれとも遊んでくれないと……お店めちゃくちゃにしちゃおうかな~」
おどおどしていた仁子、覚悟を決める。
仁子 (ニコニコの仁子は仁義の子)
仁子 (こうしてお店を任されてるんだ、私が身体を張ってでも守らなきゃ!)
仁子がカウンターから出ようとしたとき、
おっさんの肩を強く掴む美少年。
照 「おじさん、お店を間違えてますよ」
オッサン 「いてえ……」
おっさんの肩をギリギリ掴みながらも、顔はにっこりの照。
おっさん、イライラ。
オッサン 「なんだよ、てめぇには関係ねーだろ」
照 「関係あるよ。彼女は俺の大切な人だから――ね!」
照、鋭い顔でオッサンを殴ろうとする――も、寸止め。
照 「大事にされるのと、俺に裏で処理されるの……お好きにどうぞ?」にっこり
オッサン、慌てて逃げていく。
照 「二度とご来店しないでくださいませー」あはは~
一連をぼんやり見ていた仁子。
仁子 「ありが、とう……」
照 「どういたしまして。ご主人様を守るのもペットの務めだからね」
仁子 (だから、誰もご主人様じゃないから!)
すると、裏から店長が顔を覗かせる。
店長 「美甘ちゃーん、上がっていいよー」
照 「はーい♡」
代わりに返事をする照に、店長は「誰?」って顔。
○夜・帰り道。
仁子 「照くん、空手とか習ってたの?」
照 「男なら護身術くらい習うものでしょ?」
照 「誘拐なんて、日常茶飯事だったしね」ニコニコ。
仁子 (御曹司の常識と一緒にしないで??)
照 「そんなことより……はい」
照は仁子の口に肉まんを突っ込む。
照 「栄養つけないとねー。マンガも勉強も、身体が資本だから」
照 「疲れているときは、お肉が一番!」
仁子 「!」
仁子、肉まんほぐほぐ飲み込んでから、叫ぶ。
仁子 「照くん、いつ買ったの? お金は!?」
照 「なんかポケットの奥に入っててさー」
照は服のポケットから黒いカードを取り出す。
仁子 (これが噂の、ブラックカードだと……?)
仁子 「じゃあ、もうホテルとかに泊まれる……」
言葉の途中で、照の手が口の端に触れてびっくりの仁子。
照は仁子の口の端についていた肉片をパクっと食べて、話を逸らす。
照 「でもコンビニっておもしろいね」
照 「いろんなキャラが見れる!」
仁子 (キャラって言い方……)
照 「ネタ探しも兼ねて、これから毎日、俺が迎えにいくよ」
仁子 「で、でも、お金があるなら、うちにいる必要が――」
照 「そもそも、夜遅くにアルバイトなんて危ないでしょ?」
照 「ご主人様はかわいい女の子なんだから」
照 「それとも、ご主人様は俺のこと捨てるの?」きゅるるんな上目遣い
仁子 「うっ……」
照の上目遣いの破壊力に仁子がやられている間に、手を繋いでくる照。
照 「ほら、はぐれないように手も繋ごうね~。ご主人様♡」
仁子 (これ、どっちがペットだかわからないんだけど///)
二人が手を繋いで帰る様子を、通りすがりのクラスのギャルたちが発見。
女子1「あれ、王子じゃん」
女子2「ほんとだー。風邪が再発したんじゃなかったっけ?」
女子1「あの二人、仲よさそうじゃん」
女子2「どういう関係……?」
2話、おしまい。
仁子M「唯一の肉親に蒸発されて」
仁子M「絶賛、貧乏一人暮らし中の女子高校生・美甘仁子(みかもにこ)」
仁子M「王子様を飼ってます」
ふたりでちゃぶ台を囲んでお昼ごはん中。
照 「今日もご主人様のごはんおいしいねー」
照 「余計な具材がない分、小麦粉とソースの味が引き立っているよ」キラキラ
照 「こんな高尚なレシピがあるだなんて! 専属シェフにもおしえてあげたい!」
仁子 (ただの素焼きそばです、ごめんなさいっ!)
仁子 「ごちそうさまでした!」
両手を合わせたのち、
食べ終わった仁子は「ふぅ」と息をついてから立ち上がる。
照も息をつく仁子をしっかり見ている。
仁子 「それじゃあ、お買い物に行ってきますね」
照 「俺も行くよ」
仁子 「えっ?」
照 「俺、お役立ちペットを目指しているから」にっこり
〇近所のショッピングセンター・食品コーナー
照 「これ美味しそうだね」
照 「あ、果物も食べたい」
仁子 (このボンボンが!)
ポンポンと籠に食材を入れていく照。
仁子はイライラを必死に押し殺す。
仁子 「照くん。悪いんだけど、うち、お金が……」
照 「今日はステーキが食べたい――」
最高級ステーキ肉に手を伸ばした照。
照の手を仁子はぐっと掴む。仁子の顔は般若。
仁子 「おいこら御曹司」
仁子 「おんどれ、私のペットになったんでしょ?」
照 「はい……」
仁子 「庶民の財布事情を覚えんかーいっ!!」
仁子の説教に、照はしおしお。いじいじ。
照 「でも俺、ご主人様と美味しいお肉が食べたくて……」
仁子 「そういうことなら――」
仁子、格安半額ステーキ肉をとる。
シーンチェンジ。仁子の家。
超高速でお肉を包丁でたたく仁子。たまねぎをみじん切りにする仁子。
ジュウジュウと焼く仁子。うしろから照が覗き込んでいる。
シャリアピンステーキの完成!
ステーキを食べた照、おめめキラキラ。
照 「すごいよ、ご主人様!」
照 「三ツ星レストランと同じ味がする!」
仁子 「さすがにそれほどでは」まんざらでもない
仁子 「それじゃあ、私はバイトに行ってきますので」
荷物をとり、家を出ようとする仁子。だけど少し疲れている様子。
照 「俺、今日中にネームを完成させるから!」
照 「帰ってきたら、読んで感想聞かせて?」
照 「絶対に、賞金三百万円をご主人様にプレゼントするからね!」にっこり
苦笑した仁子、家を出る。
手を振って見送った照は、表情が真顔に。
照 「ねぇ、俺が気が付いてないと思ってる?」
照 「お肉、一枚しかないじゃん」
照 「俺、いっしょに食べたいって言ったのに」
照、部屋でだらしなく座って、部屋を見渡す。
照 (家には必要最低限のものしかない)
照 (俺が世話になってから、毎日バイト)
照 (たぶん、食うにも困ってる)
照 「そもそも、クラスメイトとはいえ」
照 「一人暮らしの家に男を住まわせるなんて、不用心だよなぁ……」
照 (俺が言えることじゃないけど……)
照 「変な子」しみじみ。
照 「男の意地とか、張ってられないじゃん」顔が見えないように。
○夜・近所のコンビニ
品だしもレジ打ちも、キビキビ働く仁子。
客が切れたとき、店長が仁子に声をかけてくる。
店長 「いや、ほんと美甘さんがいてくれて助かってるよ~」
店長 「卒業後はどう? うちで正社員するってのは」
仁子 「あはは……」苦笑い
店長 「まぁ、イマドキの子は大学に行くのが普通だけどね」
店長 「美甘さん真面目そうだし。すんごい大学行くんだろうな~」
店長 「じゃ、おれは裏で作業してくるから」
店長 「お店、よろしくね」
仁子 「わかりましたー」
店長がバックヤードに下がり、一息つく仁子。
仁子 (将来かぁ……)
仁子 (本当は大学にも憧れるけど……)
仁子 (ま、うちの経済状況じゃ、就職が妥当だよね)
現実を目の当たりにして、余計に疲れがでる仁子。
仁子 (なんか疲れちゃった)
仁子 (でも、もうすぐ上がりの時間だ)
仁子 (今日はどんな廃棄弁当が残ってるかな~)ほやほや
すると、面倒そうな酔ったおっさんに絡まれる。
オッサン 「よぉ、姉ちゃん。暇そうじゃねーか」
オッサン 「一杯付き合わねーか?」
仁子 (まったく、疲れているときに限って……)
仁子 (そういう仕事じゃないんだが?)
仁子 「すみません、私、未成年なもので……」
オッサン 「いいじゃねーか。お堅いことは抜きにしよーぜ」
やんわり断ろうとしても、仁子はカウンター越しに腕を引かれる。
仁子 (どうしよう……店長はバックヤードだ……)
戸惑う仁子をよそに、オッサンはどんどん顔を近づけてくる。
オッサン 「おれ、知ってるぜ?」
オッサン 「イマドキの子は、姉ちゃんのような地味な子ほど裏で遊んでんだろ?」
オッサン 「おれとも遊んでくれないと……お店めちゃくちゃにしちゃおうかな~」
おどおどしていた仁子、覚悟を決める。
仁子 (ニコニコの仁子は仁義の子)
仁子 (こうしてお店を任されてるんだ、私が身体を張ってでも守らなきゃ!)
仁子がカウンターから出ようとしたとき、
おっさんの肩を強く掴む美少年。
照 「おじさん、お店を間違えてますよ」
オッサン 「いてえ……」
おっさんの肩をギリギリ掴みながらも、顔はにっこりの照。
おっさん、イライラ。
オッサン 「なんだよ、てめぇには関係ねーだろ」
照 「関係あるよ。彼女は俺の大切な人だから――ね!」
照、鋭い顔でオッサンを殴ろうとする――も、寸止め。
照 「大事にされるのと、俺に裏で処理されるの……お好きにどうぞ?」にっこり
オッサン、慌てて逃げていく。
照 「二度とご来店しないでくださいませー」あはは~
一連をぼんやり見ていた仁子。
仁子 「ありが、とう……」
照 「どういたしまして。ご主人様を守るのもペットの務めだからね」
仁子 (だから、誰もご主人様じゃないから!)
すると、裏から店長が顔を覗かせる。
店長 「美甘ちゃーん、上がっていいよー」
照 「はーい♡」
代わりに返事をする照に、店長は「誰?」って顔。
○夜・帰り道。
仁子 「照くん、空手とか習ってたの?」
照 「男なら護身術くらい習うものでしょ?」
照 「誘拐なんて、日常茶飯事だったしね」ニコニコ。
仁子 (御曹司の常識と一緒にしないで??)
照 「そんなことより……はい」
照は仁子の口に肉まんを突っ込む。
照 「栄養つけないとねー。マンガも勉強も、身体が資本だから」
照 「疲れているときは、お肉が一番!」
仁子 「!」
仁子、肉まんほぐほぐ飲み込んでから、叫ぶ。
仁子 「照くん、いつ買ったの? お金は!?」
照 「なんかポケットの奥に入っててさー」
照は服のポケットから黒いカードを取り出す。
仁子 (これが噂の、ブラックカードだと……?)
仁子 「じゃあ、もうホテルとかに泊まれる……」
言葉の途中で、照の手が口の端に触れてびっくりの仁子。
照は仁子の口の端についていた肉片をパクっと食べて、話を逸らす。
照 「でもコンビニっておもしろいね」
照 「いろんなキャラが見れる!」
仁子 (キャラって言い方……)
照 「ネタ探しも兼ねて、これから毎日、俺が迎えにいくよ」
仁子 「で、でも、お金があるなら、うちにいる必要が――」
照 「そもそも、夜遅くにアルバイトなんて危ないでしょ?」
照 「ご主人様はかわいい女の子なんだから」
照 「それとも、ご主人様は俺のこと捨てるの?」きゅるるんな上目遣い
仁子 「うっ……」
照の上目遣いの破壊力に仁子がやられている間に、手を繋いでくる照。
照 「ほら、はぐれないように手も繋ごうね~。ご主人様♡」
仁子 (これ、どっちがペットだかわからないんだけど///)
二人が手を繋いで帰る様子を、通りすがりのクラスのギャルたちが発見。
女子1「あれ、王子じゃん」
女子2「ほんとだー。風邪が再発したんじゃなかったっけ?」
女子1「あの二人、仲よさそうじゃん」
女子2「どういう関係……?」
2話、おしまい。