望ちゃんからのそんな“余計なコト”に、俺は小さく笑った。


「愛姉に伝える俺の気持ちなんて特にないよ。」


「・・・そうらしいです、愛姉さん。
鎌田さんは愛姉さんのことが女の子として好きだとお伝えしましたけど、どうやら聞き間違えだったようです。
本日はわざわざお越し頂き、演技までしてくださったのに申し訳ございません。」


望ちゃんのそんな言葉には思わず顔を上げた。


そしたら、見えた。


愛姉の困ったような顔が。


「みっちゃんが私のことで苦しんでるって聞いたから、心配で来たの。
でも、私に伝える気持ちがないならもう大丈夫かな?」


愛姉がそう言って、自分の前にあるミラーに視線を移した。


「みっちゃん、カットとカラーをお願い出来るかな?
この髪型じゃない、私が少しでも可愛くなれる髪型にして?」


愛姉がスッキリとしたような顔で笑っている横顔が見える。


「好きな男の人のことは忘れて、私も新しい恋をすることにしたから。」


「新しい、恋・・・?」


「みっちゃんが選んでくれたんでしょ?
“結構良い男の人”を。
これが終わってから1人目の人を青君からは本当にご紹介して貰う予定だったの。」


愛姉のその言葉を聞き、俺は最後にもう1度聞いてみる。


「俺のこと・・・好きだっただろ・・・?
男として・・・男として、1度くらいは好きだっただろ・・・?」


これから新しいヘアスタイルにしようとしている愛姉に震える声で聞く。


「教えて・・・お願いだから、教えて・・・。
聞きたい・・・本当のところ、どうだったのか聞きたい・・・。」


必死に聞いた俺に、愛姉はゆっくりと俺のことを見下ろしてきた。


そして、困った顔で笑いながら・・・


「みっちゃんのことは、従弟として好きだよ?」


どこをどう見ても本心にしか見えない顔で、そう答えた。