それには必死に笑顔を作り、望ちゃんのことだけを見た。


「そこで何で俺が出てくるの?」


“可愛い余計なコト”ではない、マジで“余計なコト”を言い始めた望ちゃんには心臓がバクバクとしてきた。


「だって、好きじゃないですか。」


マジで・・・マジで、ここまで“ダメ秘書”だった望ちゃんのフォローを俺が必死にしていく。


「なに?愛姉って俺のことが好きだったの?
俺ら従姉弟じゃん。
生まれた子どもに“何か”があるかもしれないし、普通の子どもが出来る可能性が高い男を選んでおきなよ。
周りに“イトコ同士なんて気持ち悪い”って思う人も出てくるだろうし。」


愛姉のことを愛していると気付いた時からずっと思っていたことを今、伝えた。


それだけでも望ちゃんのことを選んで良かったのかもしれない。


そう思った時・・・


「「“普通”の子どもって何ですか?」」


愛姉ではなく、望ちゃんと真中が声を出した。


「店長、それを言うなら私なんてレズだし、“普通”の子どもとして産まれなかったってことですか?」


「私も“普通”じゃないからな・・・。
五体満足ではあるけど、“家”が普通じゃないし私自身も“普通”の女の子ではないし・・・。」


“普通の子ども”にめちゃくちゃ反応してきてしまった面倒な2人には流石に苦笑いになる。


「俺が言いたいのは、そういう“普通”の話じゃないんだよね。
イトコ同士だとそうでない場合よりも確率が高くなるし、そうなったら愛姉も子どもも可哀想だから。」


「「私は“可哀想”なんかじゃない。」」


驚くことに、また望ちゃんと真中の言葉が重なった。
よく見てみると・・・なんとなく、この表情も似ているように見える。


こんなに可愛い顔なのにとても強い、そんな女の子の顔を2人ともしている。


それを見て・・・


「2人、もしかして知り合いなの?」


「はい。」


「マナリーは高校からの私の“友達“です。」


友達1人作るのにも優秀すぎる兄からの審査がある望ちゃんがハッキリとそう答えた。
それを聞き、俺は苦笑いで頷く。


「”マナリー“・・・だね。
真中理衣(まなかりい)、確かにマナリーだね。
青からそのアダ名は昔から聞いてたよ。
早く教えてよ、真中。
望ちゃんの”友達“ならもっと優遇したのに。」


「レズが原因で問題を起こしてしまう私のことを雇ってくれただけで本当に有り難かったので、青さんにお願いをしてそれについては辞退をしました。」


「うん、そっか・・・、うん、望ちゃんの”友達“も良い子だね。」


そう答えた俺のことを望ちゃんも真中もジッと見上げてくる。


「鎌田さんにとって私は”可哀想“に見えるかもしれませんけど、私は”可哀想“ではありません。
私は全然”可哀想“なんかじゃない。」


「私だって全然”可哀想“じゃない。
”普通“の恋愛が出来なくても全然”可哀想“じゃないもん。」


「それは真中、アレだろ?
あんなに良い男が傍にいてくれるからだろ?
それは真中は可哀想ではないよ。」


本当のことを言った俺に、真中だけではなく望ちゃんまでも笑った。


「愛姉さんと子どもの傍に店長がいたら、愛姉さんも子どももきっと”可哀想“にならないから大丈夫ですって!!」


「いや・・・、だから何でそこに俺が出てくるの?」


「鎌田さんってヤリ◯ンだからな、誰かのことを愛し抜くこととか出来ないか〜。
”何か“がある子どもを産んだ愛姉さんのことも、”何か“があった子どものことを愛し抜くことも、それは出来ないか〜。」


2人が俺に”何“を言わせたいのかが分かり、俺は必死に口を結んだ。


なのにこの口は言うことを聞かなくて。


全然、全然言うことを聞きそうになくて。


でも、それでも・・・


必死に口を結び続けた。


愛姉が”普通“に幸せになる為に俺は必死に口を結び続けていた、その時・・・


「私はみっちゃんのことを男の人として好きなわけではないから、私はみっちゃんとは結婚したくないよ?
みっちゃんは従弟だもん、そんな気持ちになるわけがないし、結婚なんてするわけないよ。」


愛姉が泣きそうな顔で、なのに必死に笑っている顔で、俺がどうしても愛おしいと思ってしまう顔で、そう言った。