「無理矢理言うことじゃないから。」


「無理矢理じゃない・・・。
本当にそう思ってる・・・。
本当にそう思ってるのに・・・昔から俺にとっては愛姉が1番ソレだと思ってきたのに・・・。
この前愛姉が生まれ変わった時に言えなくて・・・今日は絶対にソレも言おうと思ってたのに、やっぱりダメで・・・。」 


「それだけでも聞けて嬉しいよ。」


「いや・・・ダメだ・・・、全然ダメだ・・・。
俺、全然ダメで・・・マジでダメで・・・。」


定光の肩を両手で押している私の身体を定光がギュゥゥゥッと抱きしめてきて・・・


「プロポーズも全然ちゃんと出来なかった・・・っっ!!
言いたいことも伝えたいことも何も言えなくて・・・っっ!!!
全然・・・っ、俺、全然格好良くなかった・・・!!!!」


苦しいくらいに抱き締められて・・・ 


「しかもさっき気付いたけど、場所も部屋だし婚約指輪も準備してないし・・・っっ!!!
俺めちゃくちゃ知ってたはずなのに・・・!!!
そういうのに適してる店も、ホテルも、可愛い婚約指輪も、俺めちゃくちゃ知ってたはずなのに・・・!!!!!
愛姉のことを連れて行ける日は来ないけど、愛姉のことを連れて行きたいと思う店にもホテルにも行きまくってたし、愛姉に似合いそうな可愛い指輪だって眺め続けてきたのに・・・!!!!」


それには思わず、自然に笑ってしまった。


「私が知ってる”みっちゃん“も”定光“も、今のこういう男の人の方だから大丈夫だよ?」


「何だよそれ、俺めちゃくちゃ残念な男じゃん・・・。」


「残念な男の人っていうか・・・」


言葉を切った後に沢山の思い出を思い浮かべていく。


「”愛姉に誕生日プレゼントを買うんだ〜“って言ってお店に一緒に行ったら、貯めてたお小遣いが50円で、2人で駄菓子でパーティーをしたり。
子ども達と遊びに行く場所を探してくれて、当日みんなでルンルンしながら行ったら事前予約が必要な場所で入れなくて、近くにあった普通の公園で遊んだり。
みっちゃんや定光が企画をすると結構そんなことばっかりだったから、私にとってはいつも通りのみっちゃんと定光だよ?」


「そんなことはあった・・・めちゃくちゃあった、うん・・・結構あったけどさ・・・。」


定光の肩を押していた両手を背中に回した。


「でも、そんなことも凄く楽しくて。
”もぉ〜っ、また〜?“って言いながら、いっぱい笑えて。
駄菓子パーティーも普通の公園も、みっちゃんや定光と一緒だと、私には全部が特別な思い出。」


私も定光のことをギュゥゥゥッと抱き締め返す。


「今日のこの時のことも、私には特別な思い出だよ。
定光とずっと一緒にいられるなら、私はもう何だって良いよ。」


やっと顔を上げた定光に笑い掛ける。


「大丈夫だよ、”愛姉“がいるでしょ?定光。」