私のその言葉には、定光は・・・“みっちゃん”は嗚咽を漏らすくらいに泣いた。


「なんで・・・・っっっなんで、あの時・・・・っ、あの時に、言ってくれなかったんだよ・・・っっっ。」


「うん・・・。」


「俺に初めての彼女が出来た時だけじゃない・・・・・っっっ。
俺はずっと昔から言ってたのに・・・っっ。
愛姉に、ずっと、ずっと昔から・・・っっ。
大好きだって、他の男の所には行かないでって、ずっと一緒にいてって、そう言ってたのに・・・っっ!!!!」


「うん・・・。」


「愛姉は何も言ってくれなかった・・・!!!!
愛姉は何も応えてくれなかった・・・!!!!
いつもいつも、俺だけだった・・・!!!!
だから・・・っっ、だから、俺は・・・俺は・・・・・彼女を作ったんだよ・・・。
愛姉は俺のことが大好きでもないし、いつか他の男の所に行ってしまうだろうし、ずっと一緒にもいてくれないと思って・・・。」


「うん・・・。」


「そしたら・・・そしたらさ・・・愛姉は、どこをどう見ても、俺のことが好きだった・・・。
俺に彼女が出来たことに凄くショックを受けてた・・・。」


「うん・・・、お姉ちゃんとして、凄くショックだった・・・。」


「違うよ・・・あれはどこをどう見ても女の子の顔をしてた・・・。」


「そんな顔してたかな・・・?
自分じゃそこまでは気付かなかった・・・。」


“みっちゃん”が私のことを強く抱き締めてきた。


苦しいくらいに、強く・・・。


「あの言葉はさ、お姉様達が好きになった男に言う言葉で・・・。
あの女王様みたいなお姉様達が、好きになった男にはああやって言って、可愛い女の子になる言葉で・・・。」


「うん・・・。
“みっちゃん”からのその言葉も凄く凄く可愛かったよ・・・。」


「今思うと・・・、俺は愛姉からも聞きたかったんだと思う・・・。
彼女が出来る度に言う“おめでとう”なんて言葉じゃなくて・・・。
彼女とデートに行く度に言われる”行ってらっしゃい”でもなくて・・・。」


「うん・・・。」


「俺は・・・俺は、望ちゃんのことを選んだ・・・。」


“みっちゃん”が泣きながらも小さく笑った。


「それはきっと、俺が愛姉に自分の気持ちを伝えたいっていう気持ちが心の奥底にあったわけではなくて・・・。」


“みっちゃん”がゆっくりと顔を上げ、私のことを見下ろす。


「愛姉の俺への気持ちをどうしても聞きたかったのかもしれない・・・。
だから、自分の中で言い訳を並べて、“ダメ秘書”だと知っている望ちゃんのことを選んだのかもしれない・・・。」


“みっちゃん”が・・・いや、“定光”が私の顔にグジャグシャになった全然綺麗ではない顔をゆっくりと下ろしてくる。


「去年の忘年会で青が言ってたから・・・。
本気で愛してる女からの愛の言葉は、どんな形だとしても号泣するくらいに嬉しいモノだったって・・・。
それがあればこれからも一生頑張れるくらいの凄い言葉だったって・・・。
だから俺も聞いてみたくなったのかもしれない・・・。
俺が実家を出る時にも言ってくれなかった言葉を・・・、俺が愛姉の担当から外れるって伝えた時にも言ってくれなかった言葉を・・・、俺は最後に聞きたいと思ったのかもしれない・・・。」


「最後に・・・?」


「子ども達は全員俺が引き取って、愛姉には女の子として幸せになって貰おうと本気で思ってたから・・・。」