「今も幸せだよ・・・。
私はあの子達とあのお家にいられるのが凄く幸せだよ・・・。
みっちゃんもたまには帰ってきてね・・・。
みっちゃん、お正月も帰ってこないから・・・。」


「みっ君、実家が凄く嫌いだって言ってましたよ?
もう二度と帰りたくないって。
お姉様達のことが・・・えっと、無理って・・・。」


「・・・お姉ちゃん達はほとんど家にいないから、たまにでも・・・顔を出すだけでも・・・。」


「う〜ん・・・、みっ君、たまには帰ったら?」


今の彼女が困った顔で俺に言ってきたので、俺は笑顔を作りながら答えた。


「俺、お姉様達のことが本当に無理なんだよね。
そのお姉様の中には愛姉も入ってるから。」


愛姉のことを見ることなく続ける。


「俺、昔から愛姉のことが無理なんだよね。」


無理だった・・・。


どうしても、無理だった・・・。


他の女の子達とセックスをしまくらないといけないくらい、俺の下半身は無理だった。


絶対にショックを受けているであろう顔の愛姉を見ることなく、笑顔を作り続けて口を開く。


「でも心配はしてるよ。
もう35歳だし、このまま一生独身なんじゃないかって。
お姉様達なんてレズじゃないかってこの前店に来た時に心配してたけど、愛姉レズなの?」


「・・・・・・・・。」


「レズじゃないならそろそろ婚活とか始めた方が良いよ。
愛姉は子どもが大好きだし。
お姉様達の子どもの世話をしてた時、凄く幸せそうな顔してたよね?
自分の子どもならもっと可愛いだろうし、産んだ方が良いよ。」


「・・・・・・・。」


「私の男友達で、結構良い男子達がいるんですよ〜!
みっ君も会ったことがある人達で、みっ君も”結構良い”って言っていて!
愛姉さんにご紹介したいんですけど、良いですか?」


“打ち合わせ通り”、今の彼女がその言葉を言った。


青の知り合いの中にいた独身の男で、愛姉の顔や性格なども知って貰ったうえで、俺とも会って貰い、全ての事情を知っても“まずは会ってみる”と言ってくれた“結構良い”と思えた男達のことを。


そして、この女の子・・・“今の彼女”も青から紹介をして貰った女の子だった。


ワンスターエージェントという人材派遣・人材紹介会社の代表取締役に就任している青は、日本3大財閥の1つである増田財閥の清掃会社で“清掃員”として働いていた経験がある。


それは“普通”の清掃だけではなく、増田財閥に関わるどんなことも清掃する“清掃員”。


ワンスターエージェントは青が大学生の頃に、増田財閥の分家である小関の“家”の長男、俺とも高校で友達になった一平(いっぺい)と立ち上げた会社。
増田財閥の傘下ではない清掃会社が必要だった為に青と一平が立ち上げ、青が1人で会社を大きくしていった。


今は“普通”の人材派遣や人材紹介に力を入れている時期で、紹介のみで“掃除”の仕事は請け負っている。
見えない所まで綺麗にする“清掃”ではなく、あくまで“掃除”までしか今は出来ないらしく、“この程度”の女の子だったらすぐに紹介出来ると言われて紹介をしてくれた何人かの女の子達。


その中にいたこの女の子を、俺は悩むことなく選んだ。


その女の子が打ち合わせ通り、何の問題もなく“掃除”を進めてくれていることにホッとした気持ちになっていると・・・


「いいじゃないですか。」


愛姉ではなく、間中が返事をした。


「一生独身でもいいじゃないですか。
誰のことを好きでもいいじゃないですか。
誰のことを心の中で想っていてもいいじゃないですか。
ちなみに、店長に事前にお話しましたけど、私は本当にレズですよ?」


俺は“自称”だと確信している”自称“同性愛者の間中が、俺に向かってそう言ってきた。