”私は本物の”ママ“じゃないから、この子のことを死なせちゃうかもしれない・・・。
私はおっぱいも出ない本物の”ママ“じゃないから、この子がこのまま泣き続けて、このまま死んじゃうのかもしれない・・・。
私1人じゃこの子を死なせてしまう・・・。
どうしよう・・・。“


長い時間を掛けて泣き止ませた、そろそろまたミルクの時間の赤ちゃんを抱きながら、隣に座っている”みっちゃん“に号泣しながらそう言ったら、”みっちゃん“がそう答えてくれた。


私のこと”も“女の子として好きでいてくれている”みっちゃん“が。


でも、抱き締めてくれることもなくなって、キスをすることもエッチをしてくれることも勿論なくて、私ではない可愛い彼女達の所にも行ってしまう”みっちゃん“が。


でも、それでも、私はあんなにも安心した。


あんなにも安心して、この子の”ママ“としてみっちゃんと・・・”定光“と一緒にいようと心に決めた。


みっちゃんがいつか他の可愛い女の子と幸せになっても、私は何処にも行かないで、私だけでもみっちゃんと、”定光“と一緒にいよう・・・。


そう心に決めながら、あの時の私は思ってしまった。


”私はやっぱり、定光がいいなぁ・・・。“


他の彼女達にではなく、こんなにも深い”愛“の目で私のことを見詰めてくれる”定光“に、私はそんなバカなことを考えてしまって、慌ててその気持ちは消そうとしていた。


そんな昔のことを思い出していた私に、定光はゆっくりと口を動かした。


「愛花・・・あのさ・・・」


女の子のことなんて知り尽くしているような定光が、物凄く緊張した顔で何かを言おうとしている。


でも、定光の口からは何も出てこなくて。


定光は何度も口を開けたり閉じたりしているだけで、その口からは何も出てくることはなくて。


「あのさ・・・」


何十回目かの「あのさ」を言った定光が、震える手で私の手を少しだけ握ってきた。


「検査の結果・・・大丈夫で・・・。
”そういう系“の検査だけじゃなくて、俺の身体はどこも健康で・・・。
俺、34になったけどまだまだ元気で・・・。
まだまだ・・・俺、俺も子どもが好きだし・・・どんな子が産まれたとしても、絶対に愛し抜けるし・・・。」


定光が私に愛の言葉を伝えてくれた時のように、途切れ途切れで私に伝えようとしてくる。


「だから・・・だから、あのさ・・・」


「うん。」


「あのさ・・・」


「うん。」


「あのさ・・・」


「私との子どもが欲しいの?」


「それもあるけど、あのさ・・・」


「うん。」


「あのさ・・・」


「うん。」


「・・・・・。」


「・・・・・。」


またその口から何も出てくることがなくなってしまった定光というか”みっちゃん“に、私は笑いながら聞いてあげた。


「私と結婚したいの?」


どこをどう見ても今は”みっちゃん“に見える定光に聞くと、定光は苦しそうな顔で、でも嬉しそうに笑いながら、何度も頷いていた。