定光が困ったように笑いながら、でも幸せそうに笑いながら、続けた。


「子ども達は俺が愛花のことを女の子としても愛していることをとっくに知ってたらしい。
自分ではかなり気を付けてはいたけど、俺ってこんな見た目だけど男だし、やっぱり演技は下手で。」


「そっか・・・みんなも気付いてたんだ・・・。」


「愛花もこの前はかなり頑張ってたけど、いつもは顔に出やすいタイプだから子ども達も当たり前のように気付いてた。」


「うん・・・。」


「この家に来て、俺に“愛姉”の話ばっかりしてきてさ。
“愛姉”も見たプリントだけどさ〜って、“愛姉”と一緒に買いに行った問題集でさ〜とか、“愛姉”がプレゼントしてくれた練習着だよとか、外ではそこまででもないのに、普段は”愛花“って呼ぶようになってたのにこの家では“愛姉愛姉愛姉愛姉愛姉愛姉”で。」


それを聞き、私は笑いながら頷いた。


「愛花の写真まで貼られた時は“彼女が見ると面倒だから”って嘘をついたけど、愛花の写真なんてなくてもこの家には“愛姉”も含めた俺の家族の思い出が詰まってる・・・。
この約5年間の思い出が、めちゃくちゃある・・・。
あの子達がいつも置いていく“何か”は、愛姉とどうしても結び付く物ばっかりだった・・・。」


「うん・・・。」


返事をした後に、この目から涙が流れてきた。


「こっちの家でもあの子達は“定光”の話ばっかりだった。
私の前では”定兄“じゃなくて“定光”って呼びながら、定光との新しい思い出を沢山教えてくれた。
だから私も定光のことが忘れられなかった。
あの家から定光がいなくなっても、月に1度の美容室でしか会えなくなっても、私の髪の毛に触ることもなくなっても、私が定光のことを忘れた日なんて1日もなかった。」


私の言葉に定光も静かに涙を流した。


「愛花と俺のことを子ども達が結び続けてくれてたんだな・・・。
俺が愛花から離れた後もずっと、俺達の心まで離れないように4人で必死に結び続けてくれてたんだな・・・。」


その言葉には何度も何度も頷いた私に、定光は泣きながらも笑った。


「青にもめちゃくちゃ怒られたけど、子ども達にもめちゃくちゃ怒られた・・・。
この前子ども達を呼び出して俺から愛花とのことを伝えた後に、どうしてもっと早く言わないんだって、青から怒られた時みたいにめちゃくちゃ怒られてまくった。」


「そうだったんだ?
私は特に怒られたりしなくて、その帰りにみんなで可愛いお花まで買って帰ってきてくれたよ?」


「俺が愛花に気持ちを伝えなかった理由が、あの子達にとってめちゃくちゃムカついたらしい。」


「生まれてくる子どもの話とか、青君から気持ち悪いと思われたくなかった話とか?」


「うん・・・。」


定光が私から視線を移し、上を見上げた。


「”あの青さんが定兄のことを気持ち悪いなんて言うわけないだろ”って・・・。
”俺達が“、”俺達が・・・いるだろ“って・・・。」


定光の美しい横顔から涙が次々と流れ落ちる。


「”どんな子どもが生まれたとしても、”ママ“と”パパ“の子どもなら本気で愛して喜んで世話までする“綺麗な兄貴“が4人もいるだろ“って・・・。」