「愛姉さんは1番下のお姉様なんですよね〜?
上2人のお姉様とは違って、恋多き女どころか恋愛経験がゼロでエッチの経験もない・・・えっと、可哀想なお姉様だっけ?みっ君。」


今の彼女が明るい声で切り出した。


その内容には驚いた顔をしている愛姉が、ミラー越しではなく俺のことを見上げたのは見えたけれど、俺は愛姉のことを見ずに今の彼女の髪の毛を手に取り髪の毛を確認する動作をしていく。


「みっちゃんがそう言っていたんですか・・・?」


愛姉の苦しそうな声を聞き、俺の心も息が出来ないくらいに苦しくなった。


「はい!!
私がみっ君に結婚の話を出したら、1番下のお姉様の結婚相手が見付かれば自分も結婚するって言われた時に、色々と聞いたんです〜。」


全然嫌な感じではない・・・。
客観的に聞いたとしたら、そこまで変な話ではないし、全然嫌な感じの言い方ではないはずで。


”そういう子“を選んだ。


今日のこの時間の為に、俺はこの彼女を選んだ。


愛姉が30歳の年に俺が実家を出ても、俺のことだけを想い続けてしまっている可哀想な愛姉の為に。


去年の11月の始めに35歳になった愛姉に、俺ではない別の担当をつけたにも関わらず、翌月の12月も変わらず俺のことを好きでいた愛姉の為に。


「みっ君、愛姉さんのことを凄く心配してるんですよ〜?
お仕事も上のお姉様達が立ち上げた会社で働いていて、そこでも雑用しかさせて貰えていなかったり〜。
あとは、みっ君の実家では家事だけはなく、未婚の上のお姉様達の子どもの無料ベビーシッターにもなってるって!」


「それは・・・、子ども達のことは・・・私が望んでしていることにも今ではなってるから・・・。」


「子どもに掛かっているお金だけではなくて、ベビーシッター代くらいは貰ったらどうですか?」


「お金なんていらないよ・・・。
あの子達のお世話が出来て私は凄く嬉しくて・・・。
私・・・」


愛姉がまた俺のことを見上げた。


「私、凄く幸せだよ?
あの子達がいてくれて、私は凄く幸せだよ?
みっちゃんも知ってるでしょ・・・?」


「今もそうなの?
俺が実家を出てから結構経ったけど。」


俺が実家にいた頃は、朝や夜だけではなく、店が休みの日も必ず俺と愛姉と2人で子ども達の世話をしていた。
まるで夫婦のように、自分達の子ども達のように世話をして、世話だけではなく、遊びにも出掛けて、そんな幸せな暮らしをしていた。


手を繋ぐこともキスもセックスも出来ないけれど、そんな幸せな時間を愛姉が30歳になるまで俺は貰ってしまっていた。