それにはまた全身を地面に沈めた。



これ以上下になんていけないのに、沈んだ。



そしたら・・・



「愛姉さんが好きな男の人は、定光(さだみつ)さんです。」



望ちゃんが、そう言った。



そう言ってきた・・・。



俺の名前を、初めて呼んできた。



俺の美しすぎるこの見た目とは”何となく似合わない”と言われる理由で、下の名前でちゃんと呼ばれることは“ほぼない”はずの俺の名前を。



それには思わず顔をまた上げたら、見えた。



望ちゃんの物凄く安心している顔が。



「上手く出来て良かった・・・。
青さん、私にここでのことは全て任せて全然フォローしてくれなくて。」



物凄く安心した顔の望ちゃんがゆっくりとしゃがみ、俺と同じ目線になった。



「“鎌田の幸せだけを願って、この案件を進めて欲しい“。
私は青さんからはそう言われて来ました。」



望ちゃんがそう言って、可愛い顔を優しい優しい顔にして・・・。



顔は何も似ていないはずなのに、見えた。



望ちゃんの顔の向こう側には確かに青の顔が見えた。



「私は青さんからの依頼で、愛姉さんの為ではなく鎌田さんの為にここに来ました。
鎌田さんのこれまでの人生を清掃する為に来ました。」



「これまでの、俺の人生を・・・?」



「はい、愛姉さんは鎌田さんが苦しんでいると知り、”生まれ変わって新しい恋をする“と決めてしまったので。」



「・・・・・・・。」



「苦しんでいる”みっちゃん“のことを守る為に、新しい恋をして恋人を作り、結婚もして子どもまで産むという目的を作ってしまったので。」



「・・・・・・・。」



「愛姉さんはここまで”みっちゃん“が苦しんでいるとは知りませんでした。
”みっちゃん“には好きな女の子が沢山いたから。
自分のこともその中の1人なのだと思っていたそうです。」



望ちゃんの言葉に何も声が出てこない俺に望ちゃんは続けてくる。



「キスもエッチもしてくれないけれど、“みっちゃん”が自分のことを女の子として好きなことを愛姉さんは知っていました。」



「・・・・・・嘘だ。
だって、俺・・・俺、絶対に気付かれないようにしてた・・・。
愛姉が“普通”に幸せになれるように、ちゃんと気付かれないように気を付けてた・・・。」



「さっきも気を付けていたんですよね?
でも、バレバレでしたよ鎌田さん。
バレバレすぎてビックリしたんですけど。
あんなに苦しそうに、泣きそうな顔をしながら愛姉さんのことを見たり話したりしていたら、数日前に採用をされたマナリーだって普通に分かりますよ。」



真中が何度も頷きながらしゃがみ、俺の膝に両手を重ねてきた。



そしたら、望ちゃんがその手の上に自分の手を重ね・・・



「生まれ変わってください、鎌田さん。
今までの鎌田さんのままではダメです。
愛姉さんはもう“定光さん”のことを忘れようとしてる。
だから、自分の気持ちをちゃんと伝えられる鎌田さんに生まれ変わって、愛姉さんのことを迎えに行ってください。」



そう言われ・・・



2人の可愛い女の子達からそう励まされるけど・・・



「でも、俺は本当の従弟で・・・。
正真正銘の愛姉の従弟で・・・。
俺が相手だと愛姉は可哀想なことになる・・・。」



小さな小さな声で言った俺に、望ちゃんが楽しそうに笑った。



「愛姉さんが自分の気持ちを伝えなかったのは、鎌田さんが上の2人のお姉様のことを本っっっっ当に無理だと思っているからです。」