今日は始業式なので、その後は簡単な連絡事項を告げられ学校は終了した。
放課後になり、帰宅する人や始業式早々部活に行く人などで教室内はざわざわと騒がしくなる。

わたしはこの後は特に用事はない。
どうしよう…もう帰ってしまおうか…と何となく居心地悪く教室を見回していると、談笑しているグループの一人と目があった。
女の子ばかりの5人グループ。
彼女たちは顔を見合わせ少しこそこそ話したあと、こっちにやって来た。


「若葉さん、もう帰る?」

そう話しかけてきたのは、長い髪をポニーテールに結った快活そうな子だった。手首に可愛らしい髪ゴムを巻いていて、それがブレスレットみたいでオシャレに見える。
よく日に焼けていて、なにかスポーツをやっているのかな?なんて感じた。

「え!あ、う、うん。そうしようかな、って…」

「じゃあ、一緒に帰ろ!あたしたちもみんな部活なくて帰るところなんだ。若葉さん、家どの辺?」

わあああー!誘われたー!
久々にクラスメイトに誘われたー!
前の学校ではみんなに避けられていたもんな…。
ヤバい。嬉しい。でも緊張する。
落ち着いて、落ち着いて、落ち着いて。
自然に、普通に、平凡に返すのよ。

「うん、ありがとう!家は…えーと、駅前のマンション…なんだ」

「じゃあ、駅のとこまで一緒だね。行こ行こ!あ、あたしは(やなぎ)マリヤ。よろしくね」

柳さんがそう言うと、他の女の子たちも次々自己紹介してくれた。
みんな明るくてよく笑う子たち。見た目だけで判断できないけど、クラスでも目立つタイプのグループなんじゃないかなと思った。