ユーリ・ハゼは帝国の第一皇子として生まれた。
下働きの平民出身のメイドと皇帝陛下の間に生まれた子が俺だった。

俺の母は皇帝の子を孕ったことで側室になる予定だったが、俺を出産した翌日に不審死を遂げた。
おそらく、皇后の仕業だろう。

今まで何度なく命を狙われてきた。

皇后の実家であるキチヌ公爵家は何が何でも第二皇子のルーク・ハゼに皇位を継がせたいと考えている。
弟のルークは14歳だが、皇位を狙っているのか13歳の時から出兵して武勲をたててる。

マルティナ皇后、キチヌ公爵、ルーク、いずれからの指示で俺を殺しにきた奴がいるのだろう。
俺が率いている第一騎士団に奴らの密偵がいてもおかしくない。

俺の父であるカイロス皇帝陛下は帝国の領土を広げる野心を持っている。
次期皇帝になるには、他国を攻めて領土を広げアピールすることが必須だ。

リラ王国は湖に囲まれて攻めずらいが、王宮に追い込んでしまえば中の人間は逃げにくい。

王宮を帝国の騎士で囲い込み城門より第一部隊を侵入させた時、2階の窓から人が飛び降りるのが見えた。
その人影がリラ王族の証である藍色の髪をしていたように見えたので、注意深く見ていた。

湖を魚のように泳いで出てきた、藍色の髪のマリーナ・リラとの出会いだった。
彼女は俺にかかった呪いを解くことと、奴隷になることと引き換えに自分の命を助けるように交渉してきた。

マリーナ・リラといえば、表に出てこない深窓の王女だ。
でも、実際の彼女とは聞いていた話とは全く違った。

王女のくせに、炊事洗濯、掃除、下の世話まですると言う。
彼女は今まであったどの教育係より説教臭い。
それより何より、俺を守るために迷いなく人を殺した。