あれから、3年の時が経った。
私は今、アメリカの日本人学校で教鞭を執っている。
「先生、旦那様が迎えにきてますよ。相変わらずラブラブですね」

侑李は妊娠中の私を心配してか、過保護なくらい構ってくる。
彼は24年間、私への愛を閉じ込めていたらしい。
今はその閉じ込めていた愛を解放している最中らしいが、慣れない溺愛に私は戸惑ってしまう。

(散々、夢の中でユーリ・ハゼに自分を溺愛させた癖に、本物の早瀬侑李の溺愛は想像以上だわ⋯⋯)


「もう、大人を揶揄ってないで、明日は宿題をちゃんとやってくるのよ」

「先生の書いた本の読書感想文よく書けてたでしょ」

「ふふ、あの文章からよく本当の友人は上辺だけでは見つけられないという感想が生まれたわね」

「先生の文章は言葉の裏を読んでなんぼですから」

私は癖のある自分の文章に侑李のアドバイスも取り入れながら児童文学を書いた。
今、2冊ほど出版している。
侑李はユーリ・ハゼが私の夢を全て叶えたことに嫉妬して、私の夢を叶えたいといつも言っている。
ユーリ・ハゼは私が侑李をモデルにした夢の存在なのに、そのような存在に嫉妬している彼が可愛らしい。

「まりな、もう、臨月なんだから仕事もほどほどにするんだぞ」

「ママ、働きすぎ!ヒイロが疲れたってお腹の中で言ってるよ。もうすぐ、私お姉ちゃんになるのね。楽しみだな」
侑李と娘のサラが教室に入ってくるなり私に抱きついてきた。

サラは現在2歳の私たちの娘だ。
男の子ならヒイロ、女の子ならサラにしようという子供の名前を私たちは高校の時から考えていた。
そこまでの会話をしながらも、侑李の好意を拒否し続けた私のアンバランスさに彼も相当苦労しただろう。


私は現在2人目の子を妊娠している。
お腹の子は超音波健診だと男の子だということだった。
男の子でも女の子でも何人目の子でもひたすらに愛し抜きたい。

「侑李幸せです。愛してます。これからもずっと」
「まりな、俺も本当に幸せだ。改めて俺の気持ちに応えてくれてありがとう」

思わず漏れた私の本音に侑李が応えてくる。
毎日のように愛を語り合う私たちを、笑顔でサラが見つめていた。