予想外の侑李の登場に驚きつつも、私は彼がまだ私を思ってくれていたことに感動していた。

思えば夢の中でユーリ・ハゼに言わせた「ただ、俺を好きだと言ってくれれば良い」は侑李が私に24年前に言ったセリフだ。

私はその言葉を言うまでに、24年もの時を費やしてしまった。
でも、今はもう迷わない。

24年もの時が経って、美しさに磨きがかかった上にスーパードクターになった侑李。

昔の私なら彼に引け目を感じて彼の胸には飛び込めなかった。
でも、私は夢の中で年の差も身分の差も超えて彼と結ばれた。

介護や仕事に疲れ、婚約破棄のショックがあっても私が夢見たのは悪夢ではなく侑李の夢だった。
これほど私を想ってくれる人も波長があう人もいない。
彼を諦めることなど一生できないのだから、これからは彼と一緒にいる為の努力をしようと思った。

「まりな、お前の夢は全部叶えるぞ。ユーリ・ハゼになんか負けない」

侑李が私の作り出した夢の存在に対抗意識を燃やしているのがおかしい。
昔から、彼は変わった人で変わり者扱いされてきた私と波長がピッタリだった。

「侑李、相変わらず美しすぎです。もう少し、適当な顔だったら良かったのに。でも、もう迷いません。私はあなたの中身に心底惚れ込んでいるんです」

私が一緒にいて居心地が良いのは、40年も生きてきて侑李しかいなかった。
もうちょっと地味な人だったら良かったのに、侑李は誰もが振り向くような見た目をしている。
結局それは24年経っても変わらなかった。

地味な私が隣にいたら不釣り合いと思われてしまうだろうが、もうそんなことはどうだって良い。
周りにどう思われようと、私たちは一緒にいるしかないと24年の時と5年間分の夢が教えてくれた。

「まりな、本当に夢みたいだ。世界一幸せにする。ずっと君だけを愛していたし、きっとこれからも君しか愛せない」

病院のロビーまでたどり着いた時、急に侑李のスイッチを入れてしまったのか彼がキスをしようとしてきた。

流石に芸能人顔負けの侑李に周囲が注目してる中、そんなドラマのような真似をする勇気はない。

「侑李、ちょっと待って。ここでは」

私が必死に侑李を押し返していると、聞きたくもない誠一の声が聞こえてきた。

「まりな、いいところにいた。聞いてくれよ、恵麻が産んだのは俺の子じゃなかったんだ。あいつは本当に酷い女だな。散々な目にあった。もう、お前しかないと再確認したよ」

誠一が私の方に縋るように寄ってきてゾッとした。
恵麻が産んだ子が誰の子なんかどうでも良い。

もう、私は恵麻とも誠一とも関わりたくない。
思わず、私は侑李にしがみついた。