「おはようございます。ユーリ皇子殿下。紋様は消えていませんが、痛みは和らいでいるのではありませんか? 」
目を開けると、マリーナが俺の顔を覗き込んでいた。

「マリーナ、お前は寝てないんじゃないのか? 」
「体を横にして休めたりしていたので、大丈夫です。今日もしっかり奴隷として働くことができます」

俺はマリーナの体を心配して声をかけたのに、寝不足の彼女の作業効率を気にしたと思われてしまった。

「朝食が配られているようですよ。とってきましょうか」
「いや、ここで食事が持って来られるのを待とう」

テントを捲られ、メバル伯爵が顔を出す。
昨日に引き続き、俺の体に浮き出た紋様を気味が悪そうに見ていて気分が悪い。


「皇子殿下、朝食でございます」
スープが一つ置かれる。
こんなもので腹が膨れる訳がない。
遠征が長引いたから、食料が尽きて現地調達になっているから仕方がない。


「おい、メバル伯爵!マリーナの分も持ってこい」
俺はメバル伯爵を怒鳴りつけた。

「奴隷と一緒にお召し上がりになるのですか?」

メバル伯爵がマリーナを見下すように一瞥する。
マリーナは俺を一晩中守ってくれた女だ。

彼女が他の人間から見下されるのは腹がたつ。
そう思い、マリーナの顔を見ると真剣にまた考え事をしていた。

「これは、毒です。このスープは捨ててください。飲んでしまった方は、指をこのように奥まで突っ込み吐き出させてください! 」

マリーナが突然発した言葉に俺は思わず、スープをメバル伯爵に投げつけて睨みつけた。