朝顔の大輪が咲く浴衣を身にまとい、鳥居の前で桐生くんを持つ。


 浴衣を買いに行ったり、メイクを椿ちゃんに教えてもらったりと、慌ただしく過ごしてるうちに、あっという間に花火大会の日がやってきた。


 ちなみに、この浴衣は椿ちゃんに選んでもらったもの。


 桐生くんを花火大会に誘った翌日。


 椿ちゃんに桐生くんを花火大会に誘ったという話をした。

 そこで告白するという話もした。


 椿ちゃんは最初、すごく驚いていたけれど、笑顔で頑張ってね。と応援してくれた。


 この浴衣は、その日の放課後に選んでもらったもの。


 最初は、普段着で行くつもりだったけど、せっかくのデートなのにもったいないと言われ、急遽椿ちゃんと一緒に買いに行った。


 センス抜群な椿ちゃんに選んでもらえてよかった。

 薄水色の布地にピンクの朝顔が映えて、とても可愛らしい。


 桐生くんとのお祭りは楽しみだけれど、告白するのは不安だった。


 でも、椿ちゃんが可愛くしてくれたおかげで自信がついた。


 楽しみというワクワクと、二人きりで回るという緊張で、心臓がドキドキと音を立てる。


 「華音」


 突然、下の名前で呼ばれて驚く。


 声のする方を向くと、桐生くんが近づいてくる。


 わたしの名前を呼んだのは、大好きな桐生くんだった。


 「わりぃ。遅くなった。」


 「わ、わたしも今、来たところだから……。」


 緊張で声が上擦る。


 初めて見る私服姿に胸がドクンと音をたてる。


 私服姿もかっこいいね、とか、どうして名前呼びになったの?とか、言いたいこと、聞きたいことはあった。


 でも、緊張して、その言葉が口から出ることはなかった。


 「その浴衣。……似合ってる。」


 不意打ちの言葉に顔が赤くなるのを感じる。


 桐生くんに褒められたのがすごく嬉しい。


 緊張するけどわたしも。


 「桐生くんも、かっこいいね。」


 そう言うと、桐生くんはそっぽを向いて気だるげに、おー。と呟いた。


 少しだけ見えた耳は赤く染っていた。