学校からの帰り道。


 わたしは、はぁと深いため息をついた。


 意気込んだのはいいものの、告白するタイミングが全く思いつかない。


 誰もいない教室で告白する?

 でも、そんな遅くまで桐生くんが居てくれるとも思わない。


 メッセージを送ってみる?

 そもそも、連絡先を交換してない……。


 手紙で告白?

 手紙ならあまり緊張しないけど、告白はちゃんと自分の口から直接言いたい。


 「う〜ん。どうしよう……。」


 そんなことを考えながら、とぼとぼと歩いているといつの間にか駅に着いていた。


 ICカードをスクールバックから取り出す。


 ピッと無機質な音が鳴る。


 改札を抜け駅のホームに立つ。


 うぅ……。いくら考えてもいい案が浮かばない。


 思わず頭を抱えたくなる。


 しかし、駅のホームでそんな事をしたら変な人確定。


 こんなところで、奇行に走るほど馬鹿では無い。


 そんなことを思いながら、ぼんやりと掲示板を眺める。


 もうすぐ夏休みだからか、夏限定のちょっとした子供向けのイベントなどのポスターが貼ってあった。


 そこで、とある一枚のポスターが目に留まった。


 「今週の土曜日、花火大会なんだ……。」


 誰にも聞こえないような小さな声でポツリと呟く。


 夏祭りはデートにもピッタリだし、雰囲気もバッチリ作れる。


 わたしも彼氏がいたら、一緒に花火大会行ってみたかったな〜。


 そこまで考えて、あることを思い立つ。


 花火大会で告白するのはとてもロマンチックだと。


 これだ!!


 桐生くんに花火大会で告白しよう!


 そうと決まれば、明日さっそく桐生くんを花火大会に誘ってみよう。


 そう意気込んで、わたしは冷房の効いた涼しい電車に乗り込んだ。



 この時のわたしは、何も考えていなかった。

 ほぼ初対面の一度も話したことが無いクラスメイトから、いきなり花火大会に誘われたら、どう思うかなんて。