さらに数日後、ついに魔王と王妃が1年ぶりに魔界に帰ってきた。
……異世界の特産品など、大量の『お土産』を持って。
やはり、このラブラブ夫婦は、二人で異世界旅行がしたかっただけなのだ。




魔王の私室へと繋がる居間では、魔王と王妃がソファに座っている。
その横には側近のディアも立っている。
魔王が帰ってきたので、ディアは魔王の側近に戻ったのだ。
その正面のソファにはアイリとコランが並んで座る。
この1年間の出来事を報告するためだ。

「あぁ?魔獣界?魔獣王?なんだそりゃ!?」

魔王は予想通りの反応をした。
不在の間の出来事が濃厚すぎて、すぐに理解を得るのは難しそうだ。
魔王はアイリとコランではなく、まずディアを睨みつけた。

「ディア、テメエいつから王を名乗るほど偉くなった?元々オレ様の側近だろうが」
「……はい。メインは側近ですが、サブで魔獣王もさせて頂きたいのです」

ディアはこれからも魔王の側近だが、魔獣王という肩書きも増えるという意味だ。
そんな、副業かバイトみたいなノリで魔獣界の王をやるのか……
誰もがツッコミたくなる魔王とディアの会話である。

「まぁ、それならいいぜ。ほどほどにしとけよ」
「承知致しました。ありがとうございます」

それで許可するんかい!とは、誰もツッコまない。
魔獣王を『ほどほどにする』とは、どういう事なのだろうか……。
ほどほどに力を抜いて魔獣王をやっても、魔獣たちやエメラに失礼だ。
まぁ、これで魔獣王の件に関しては魔王の許可が下りた。

そして極め付けは、アイリの懐妊の報告だ。
今度も魔王はディアを睨みつける。

「オレ様がいない間に、ヤってくれたなぁ……ディア」
「恐れ入ります」
「褒めてねぇよ」

怖いもの知らずのディアは、魔王に対しても怯まない。
魔王の隣に座る王妃アヤメは驚いた顔をしつつも、すぐに微笑んだ。

「あら……もう孫が生まれるの?ふふ、嬉しい」

見た目17歳のアヤメがそれを言うと、なんだか奇妙だ。
まぁ元々、アイリとディアの仲は魔王も王妃も認めている。
幸せそうに照れて微笑むアイリの左手の薬指の指輪を見れば、それも納得できる。
アヤメがニコニコしながらディアをフォローする。

「でも、オラン。私も正式な婚礼の前に懐妊したよね」
「……あぁ?そうだったかぁ?」
「もう、オランったら……とぼけたら、めっ!」

手が早いという意味では、魔王の右に出る者はいない。