だが当然コランは、それだけでは納得できない。

「でも、それでいいのか!?ディアはオレたちの家族なんだ!アイリだって、そうだろ!?」

するとイリアは、バン!!とコランの座る机に両手を突いた。
そして、キッとコランを睨みつける鋭い眼には、鬼気迫るものがある。

「よくないに決まってるじゃない。だから、アタシがディアを連れ戻しに行く」
「……へ?」

アイリらしからぬ迫力に押されて、コランは身を引いた。

「ディアが言ったのよ。もし戻らなければ、アタシに迎えに来てほしいって」
「え?アイリが魔獣界に行くのか?それこそ危険だろ!」
「平気よ、下僕(しもべ)も連れて行くから」

するとイリアは、横に立つレイトに視線を送る。

「レイトくん、いいわよね?アタシに従いなさい」
「うん。王女には逆らえないからね」
「えぇ!?レイトお前、いつの間にアイリの下僕(しもべ)になったんだ!?」

もう、コランには何が何だか分からない。
だがレイトは単にイリアに服従するのではなく、正当な理由がある。
レイトの考えは、こうだ。

「例え命に危険がなくても、ディア先生を魔界に帰す保証はない。監禁されてる可能性もあるからね」
「さすがはアタシの下僕(しもべ)ね」

イリアは、ようやく笑みを浮かべた。

ディアが魔獣界にいる以上、魔界も、ディアの身にも危険はない。
しかしディアが帰ってこない状況からして、彼に何かあったのは確実だ。
現状、魔獣界とは争っていないので、魔獣界に行くだけなら危険ではないだろう。
……歓迎は、されないだろうが。
むしろ、護衛や兵を連れて大人数で行く方が警戒されてしまう。



こうして、イリアとレイトは二人で魔獣界へと向かう事になった。