そんな、ある日の朝。
ここは、いつもの通り、ディアの部屋のベッドの上だ。

「ディア!!起きて、ディア!!」

自分の体が揺すられている感覚と、アイリの必死な声で、ディアは目を覚ました。
寝起きのディアは目を半開きにして、ようやく隣のアイリに焦点を合わせる。

「……アイリ様?」
「うぇ~ん、ディア~!!良かったぁ~、目ぇ覚ましたぁ……!!」

アイリは目に涙をいっぱい溜めて、今にも大泣きしそうだ。
朝なのだから目を覚ますのは当然なのだが、アイリは何をそんなに心配していたのか?

「どうしたのですか?何事ですか?」
「それはこっちのセリフだよ~!!ディア、全然起きないから、心配でぇ……」

ディアはいつも早起きなので、必ずアイリよりも先に起きている。
そんな彼が、珍しくアイリよりも目覚めるのが遅かった。
要は、朝寝坊した。それだけの事なのだが……。
ディアが寝坊するのは、そのくらい珍しい事なのだ。

「あぁ……申し訳ありません。もう、こんな時間なのですね」
「ディア、大丈夫?最近、疲れ気味だし、今日は休んだ方がいいよ……」

確かにディアは最近、心身共に疲労していて寝不足だ。
その原因は、アイリ……いや、イリアにもあるのだが……。
朝昼はアイリと仕事して、夜はイリアに調教され……なんとも背徳的な暮らしだ。

「大丈夫ですよ。すぐに起きて支度を……」

そう言いかけたディアを、アイリが珍しく強気に制止した。

「今日はダメ、休んで!」
「ですが、側近の私が休んでは……」
「1日くらい、仕事は私1人で大丈夫だから。ね?」

それでも返事をしないディアに、アイリはトドメの一言を放つ。

「ディア、これは命令!」
「……承知致しました」

ディアはアイリの命令を決して拒めない。
最近、アイリがちょっと強気になってきたのは、イリアの影響なのだろうか。
だんだんと、二人から同時に調教されている気分になるディアであった。