リィフが手に持つ冊子を見ると、それはどうやらファンクラブの会報らしい。
ちなみに、その号の特集記事は、『リィフ会長によるディア様の補習体験記』であった。
リィフは会報を抱きしめて、前のめりでディアに訴える。

「今は非公認の私設ファンクラブやけど、ディア様に公認してほしいんです!」

するとディアは、リィフではなく横のアイリに視線を向けた。
まるで助けを求めるように。

「えぇと……アイリ様。よろしいでしょうか?」
「え!?い、いいんじゃない!?応援は自由だし……」

ディアを応援してくれるというのなら、悪い気はしない。
アイドル並みに人気のあるディアは、恋愛対象ではなく純粋なファンとして応援する女子も多い。
だからリィフは会長としてディアの情報を集めたくて、アイリに応援を頼んだのだ。
……しかし、身近にこんなファンクラブが存在するなんて、アイリもディアもずっと気付かなかった。

「ほな、公認してくれるんですか!?」
「えぇ……まぁ、はい」
「やったぁー!!ありがとうございます!これで、ようやっと公認ファンクラブや!」

全力で会長を務めているリィフの熱意に、思わずディアもアイリも笑顔になる。
リィフの好意はディアへの恋心ではなかったという安堵から、アイリはようやく緊張から解放された。

「高校卒業したら本格的にファンクラブ運営会社を起業するので、よろしゅう頼んます!」
「えっ!?」

さすがに話が大きくなりすぎて、ディアは驚きに声を上げた。
それが高校卒業後のリィフの夢なら、教師として応援したい気持ちはあるが……複雑である。
ディアから許可を得たリィフは、すでにやる気満々でいる。

「次の目標は、ディア様の写真集発売やぁー!!」

すでに、リィフはアイドルプロデューサーだ。ディアは、アイドルという肩書きも増えてしまうのか。
困った様子のディアの横で、アイリもまた乙女の妄想を膨らませていた。

(ディアの写真集、欲しい……私もファンクラブに入ろうかな)

ディアにメロメロなアイリは、ついついファン寄りの思考になっていた。
そんなアイリの横にリィフが近寄ってきて、ディアには聞こえないように耳打ちした。

「アイリ様とディア先生がご結婚の際には、ファンクラブ一同で祝福するで」
「え、ふぇっ!?」

真っ赤になって声を上げるアイリだが、リィフはニッコリと笑って離れていく。
リィフはすでに、アイリとディアの関係に気付いていた。いや、誰が見ても一目瞭然。
二人の仲は、すでにファンクラブ公認であったのだ。