ようやく晴れて両思いになれた二人ではあったが、ディアは恋愛の封印を継続中。
それでもやはり、心が通じ合った二人は、以前とは違う。
いつかディアの封印が解けて愛される日を楽しみにしながら、今日もアイリはディアに愛を伝える。

そんな幸せな日々を過ごしながら高校3年生の春、卒業間近の日。
下校時、いつものようにアイリとディアは手を繋いで校庭の真ん中を目指して歩いていた。
その時、後ろから走って追いかけて来た誰かが、二人の行く手を阻むようにして前方に立ちはだかった。

「すんません、ちょっと待ったってや」

独特の口調で二人の歩みを止めたのは、リィフ。

「ディア先生。高校を卒業する前に、ウチの思いを告白してもええですか?」

それを確認する時点で、すでに告白しているようなものだ。
リィフの真剣な眼差しを見たアイリは、懸念していた事態がついに起きてしまうと動揺した。

(えぇ!?リィフちゃん、今ここで告白するの!?わ、私もいるんだけど!?)

そう思ったアイリは慌てるが、ここは校庭の真ん中。逃げる場所も隠れる場所もない。
そして、ディアがリィフの気持ちを受け取らない事も分かっている。
……だってディアは、アイリと両思いなのだから。
だからこそアイリは、リィフの失恋を見届けなければならないという切なさに胸を痛めた。
ディアはこういう状況にも慣れているのか、落ち着いて構える。

「はい、大丈夫ですよ。どうぞ」

優しく促すディアは、なんと大人な対応だろうか。アイリは改めて惚れ惚れしてしまう。
ディアは決して、人の思いを聞かずに跳ね返すような事はしない。

「ほな、言います。ウチ、ずっとディア先生に憧れていました!」

アイリはドキドキしながらリィフの告白を見守り、ディアは真剣に聞いている。

「どうか、認めて下さい!!」

……ん?認めて下さい?
付き合って下さい、ではなく?付き合うのを認めてほしいという意味?
リィフの告白は独特な言い回しで、どう解釈すればいいのか分からない。
さすがのディアも返しに困っている。
ディアの困り顔を見たリィフが、この妙な空気を読んで言い直してきた。

「どうか、公認したってや!!」

余計、意味が分からなくなった。
黙って告白を見届けようとしていたディアも、さすがに物申すしかない。

「えぇと……すみませんが、分かりやすくお願い出来ますでしょうか」

本当はディアも、告白に対してリテイクを出すなんて野暮な事はしたくない。
真面目なディアは、告白の内容をしっかり理解してから返事をしたいと思う。
するとリィフは手に持っていたカバンから、一冊の冊子を取り出してディアに見せた。

「実はウチ、ディア様ファンクラブの会長やっとります!」

「……は?」

アイリとディアが同時に、とぼけた声を出す。