っと、思ったら場所が変わった。


死ぬ前にいた場所だった。


うん、それはいい、それはいいんだけど…。


「おらあああああ!!」


「やんのかてめぇええ!!」


「こいやああああ!!」


目の前の惨劇は…な、なに?


思わず後ずさろうしたら。


トン。


誰かにぶつかった。


「あ、すみません。」


思わず振り返り、ぶつかった人をみると黒髪の青年がニッコリ笑って私を見ていた。


「いいえ、こちらこそ、ごめんね?で、君は誰?天使かな?それとも死神かな?」


「て、天使??死神??」


掛けられた言葉に頬がひきつる。


ナンパか??


「だって、急にこんな場所に現れたから。」


と周りを青年が周りを指す。


見渡すと、さっき見た喧嘩している人たちに、明らかに警護されている青年。


そして、その腕の中にいる私。


やばい…。


どう考えてもやばい。


サーっと全身の血の気が引いていくのがわかった。


「あ…」


「あ…?」


なんとかこの場所から逃げられないか考える。


「わ…私…。」


「私?」


だが逃げようにも腰をがっつり捕まれている。


にこやかに、威圧してくる青年。


「天使?それとも、俺を殺しにきた死神?」


「ころし!?~~っ!い、一般通行人じゃ、だめですか?」


「あははー。ダメだよ?二択だよ?」


「て、天使でお願いします。」


「はい、天使ちゃんね。じゃあ、お前ら、俺の天使ちゃんにいらんもん見せんな。物騒なやつらはとっとと片付けろ。」


そういうと青年はネクタイを外し、わたしを目隠しして、そっと耳元で囁いた。


「今日から君は俺の天使ちゃんね。」


ゾクリとするような甘い声の後、彼はわたしの耳を塞いだ。




暫くして、耳から手離れた。


さっきまであった喧騒はなく。


季節外れの鈴虫の音だけが聴こえていた。


「あ、あの、もう目隠し外していいですか?」


恐る恐る質問。


返答はなかった。


ネクタイをずらし、そっと周りを見渡す。


いっぱいいた人もいなくなっていた。


振り返っても誰もない。


夢?いや、まて、今日のどこから夢?


狐に摘ままれたような心地だったが手にもったネクタイが現実を示していた。


とりま、あの神様(仮)殴りたい…。