数時間前。
猫が私の前で道路へと横切った。
目の端に映ったのはトラック。
「危ない!!」
反射的に身体が動いていた。
そして…。
キキーッ!!ドン!!!!
まるで転生のテンプレのような事故にあった。
死んだと思った。
いや、実際死んだのだろう。
今ふわふわと浮いているという現実感のない現実を正しく認識した。
うわー…お母さん、お父さん、親不孝な子でごめん…。
急に飛び出してごめん、トラックのあんちゃん。
ってか部屋めっちゃ汚いままだー。
洗濯物も出しっぱなしだし、BL本と乙女ゲー散乱とか死ねる…いや、死んだんだった…。
「あー…あのぉー、色々考えてるとこごめんね?ウチの猫を助けてくれたみたいで…ありがとう。」
目の前にいかにも神様って感じの人が猫を撫でながら座ってる。
死んだ場所で浮いてた私はいつの間にか白い空間に移動していた。
あー…これはまさしく転生の前振りだな。
「ところで、君の寿命まだあるから…身体修復したら戻すね?」
「へ?」
一瞬神様っぽい人が言っていることがわからなかった。
「事故も無かったことになるから。」
「え?」
「え…何…??」
心底不思議そうな顔をする神様(仮)。
「あ、いや…今ハヤリの転生じゃないのかなー…なんて。」
「あー、そういうのもあるっちゃーあるけど、君の場合、身体修復したら還した方がいいみたいで…。
それにトラックのあんちゃん可哀想じゃん?」
「…確かに…。」
事故のテンプレにされてるぐらい事故ってるもんなートラックのあんちゃん。
無かったことになるならいいか。
よかったな、見知らぬあんちゃん。
「納得してくれたならなにより。
それでなんだけど身体、修復できるの今日の夜中なんだー。
で、ちょっと君の過去観させてもらったんだけどね。
仕事もちょうど休みで予定もなかったみたいだから、
巻き戻しとか時間停止しないでそのまま夜中に元の場所に戻そうと思うんだけどいいかな?」
「あ、はい…それでいいです。」
「うん、わかった。んで記憶はー…そのうち忘れる感じだから。」
「あ、はい。」
「じゃぁ、次目覚めたら元の世界だから、おやすみ。」
人差し指でトンとおでこを押された。