そして放課後。

真菜とコランとアイリは、一緒に昇降口を出た。
すると昇降口の端に、ディア先生が立っていた。
アイリはディアを見ると、真菜とコランに向かって手を振った。

「じゃあ、真菜ちゃん、お兄ちゃん。また明日ね」
「うん、また明日」
「また明日な。気をつけて帰れよ」
「ディアと一緒だから大丈夫だもん」
「ははっ、そうだな」

アイリはディアの所まで行くと、嬉しそうな顏で何かを話している。
そして当然の事のように手を繋いで歩き出し、二人で校舎を出て行ったのだ。
こんな、誰にでも目につく場所で……。
真菜は、そんな二人の様子から目が離せなかった。

「アイリちゃんとディア先生って、ラブラブなのね……」
「ん?あぁ、ディアはオレ達が赤ん坊の頃から世話役だしな」

あぁ、なるほど……真菜は納得した。
コランもアイリも、ディア先生に育てられたという事だ。
ディアは見た目は大学生くらいだが、悪魔なら何千年も生きているのだろう。
そう言われると、手を繋いで帰る二人の姿が、親子のように見えてくるから不思議だ。

「あれ?アイリちゃんって、いつも魔獣に乗って帰ってたのに」

真菜がそう思って、二人の背中を目で追っていく。
ディアとアイリは校庭の真ん中まで歩くと、そこで立ち止まった。
アイリが少しディアから離れる。
するとディアの体が発光して、一瞬で魔獣へと姿を変えたのだ。

「えっ!?」

真菜は目を疑った。
ディアが変身した魔獣は、アイリがいつも背に乗って帰る、あの黒い犬の魔獣だ。
そして、防災訓練の時の魔獣。
真菜は隣に立つコランに問いかける。

「今、ディア先生が、魔獣に変身したんだけど!?」
「あぁ、ディアの本当の姿は魔獣なんだ」

なんと、魔獣が本当の姿とは……。
魔王の側近であり、王子と王女の世話役であり、学校の先生であり、魔獣……。
真菜よりも肩書きの多いディアを、驚きよりも尊敬の目で見てしまう。
コウモリのような羽根を広げた魔獣の背に、アイリが飛び乗る。
空へと飛び立つディアとアイリを見送りながら、真菜は思った。
……まだまだ、魔界は謎と不思議が多い、と。

「真菜、オレ達も手を繋いで帰ろう!!」
「え、なんで対抗してるの!?」
「いいじゃん~!!」
「手を繋いだら帰れないでしょ!」

手を繋いで校門を通ると、人間界への転移の魔法が反応しない仕様だからだ。
そして愛情表現がストレートなところが兄妹似てるな、と思った。