「お料理、とても美味しかったです」としか言えなかった。


食器を全部下げると、後藤くんのお父さんからもう片付けはいいからみんなと合流しろと声がかかり姫乃達は店を出た。

カラオケ店に歩いて行きながら姫乃は後藤に尋ねた。

「後藤くんはあのお店…跡を継がなくてもいいの?」

「あぁ、従弟が今修行してるからそいつが継ぐかな」

「へぇ」

「息子が継がなきゃいけないってことはなくて、『松野』が続けばいいって考えだからさ」

「松野って名字?」

「そうだよ、母さんの旧姓、継ぐ従弟は今度も後藤だけどな(笑)母さんも店を手伝ったりはしてないんだ、だから今日は仕事」

「そうなんだ」

「味を継げば誰が継ごうが関係ないって考えだから好きな事していいって俺はカメラの道にしたってわけ」

ふーん、なるほど〜

話しているとカラオケ店に到着してみんなと合流した。

後藤と姫乃が座ると田辺がすぐに間に入ってきた。

姫乃はちょっと座る位置をズラした。

わざわざ間に入らなくても…まあ、別にいいんだけどね。

「後藤さん、あのお店、後藤さんのおうちだそうですね」

「いや、まあ、あそこには住んでないから家じゃないけど、親父の店だな」