太志はお弁当を食べ終えてお茶をゴクゴクと飲んでいた。
「あの日の事は自分でもびっくりするくらい憶えている」
「私もです…一生忘れられないと思いました」
「メモを書く時、凄く迷った」
姫乃もお弁当を食べ終えて空箱を横に置いた。
「正直、メモはなくてそのまま去って行くのかと思ってました、毎日スマホが鳴るのを待ってて、番号知ってるんだからかけたいとも思ったけど自分が言い出した事なのにそれを破るのは違うと…」
「俺、仕事人間なんだよ、もし、すぐかけてきてたなら冷めてたかも…」
「…ですよね、お休みがないって言ってましたよね」
「あぁ、でも…」
太志さんが黙ってしまった。
「いや、違うな、冷めないかも」
「え?」
「上手く言えないけど…その…身体が姫乃を求め始めた」
「えっ、それって…」
太志さんが照れている。
「姫乃を抱きたいと思い始めていて、仕事が終わってから連絡をしようと何度も迷った」
「私も…その…あの夜の事を仕事中でも思い出して…キャッ、恥ずかしいです」
「あー、じゃあお互いだな」
姫乃はコクコクと頷いた。