「一緒に来ていたのは彼氏とかじゃなかったか?」
「はい、彼氏はいません、職場の同僚です」
別に言い訳をしたいわけじゃなかったが彼氏がいないことはちゃんといいたくて…
それを悟ったのかまたフッと笑われてしまった。
もうすぐ25歳なのに、きっと20歳過ぎと思われているような気がする。
「さて、どうしようかな、もう少しゆっくり呑みたい気分なんだが…」
「どうしましょうかね?」
「抜けて来てくれたってことは、そう取ってもいいって事だよな」
「えっ……まあ…はい」
姫乃は正直な気持ちを話し始めた。
「何故かあの時ぶつかってから貴方から目が離せなくてついチラチラ見てしまってました、すみません」
「謝ることはない、俺もエンジェルキッスを選ぶくらいは君の事が気に入ったよ」
ぶわっと姫乃の顔が赤くなった。
彼はゆっくり歩幅を合わせてくれてしばらく歩くとホテルの前に着いた。
ラブホテルではなく一流ホテルの前だった。
「ちょっとここで待ってろよ」
コクンと姫乃は頷いた。
フロントで話をしている後ろ姿を見ていると、姫乃のスマホが鳴った。
あっ、後藤くんだ。
「もしもし」
「どうしたんだよ、帰ったのか?」
「うん、ごめん、試合に夢中だったから後で連絡を入れようと思ってた、お金また連絡してね、おやすみ」
スマホを切ると彼が後ろに立っていた。