「ありがとう」
「ちょっと俺が緊張してる」
「緊張?」
「その…紹介するのを…」
太志さんが照れている。
姫乃は太志のあぐらの中に入ってちょこんと座った。
「無理しないでね、ちゅっ」と頬にキスをした。
「サンキュ」とぎゅーと包んでくれた。
耳元で、俺の名前を書いた持ち物を忘れんなよと言い頭をなでてくれた。
「もう入れてあるよ、今日は泊まる?」
「いや、今日は帰る、俺も準備がある」
太志は最後にキスをくれて帰って行った。
土曜日の夜8時に姫乃は『宮乃』の駐車場に車で来ていた。
1泊なので空港の駐車場に車を預けることにした。
店舗はもう営業時間は終わっていて駐車場は真っ暗だ。
ふと歩いてくる影が見えたので太志さんかと思い助手席に置いてあった鞄を後部座席にうつした。
コンコンと車の窓を叩かれて窓を開けると太志さんではなかった。
姫乃は車から降りてぺこっと頭を下げた。
着物を着ているからきっと太志さんのお兄さんだ。
「初めまして、西姫乃と申します」
「ん?」
不思議そうな顔をしていたので太志さんと待ち合わせをと言うと、何かバタバタと支度してたなと教えてくれた。
「そっか、君と行くんだね」