仕事が終わると急いで駐車場に行き、家まで帰るのが待てなくて車の中で太志から貰った箱を開けた。

「えーっ、指輪だ!暑っつい」

姫乃は車のエンジンをかけるのも忘れていた。

車の中は蒸し風呂のように暑い。

エアコンを調節して指輪を箱から恐る恐る取り出した。


「綺麗……ダイヤだよね」

大きな石ではなくリング周りに小さなダイヤが散りばめられている。

「どうして指輪?」

姫乃はいろんな指にはめてみたが左の薬指にぴったりだった。

「え?」

右の薬指にもはめてみたがきつくて入らない。

今度太志さんに聞いてみよう。

姫乃は指輪を片付けて家に帰った。


夕食、お風呂を済ませると顔に美容パックをぺたっと貼ってまた指輪の箱を開けてみた。

姫乃は髪の毛以外にお金をかけないからアクセサリーは実は持っていない。

じーっと指輪を見ているとインターフォンが鳴った。

時刻は21時だった。

「はい」と返事をすると「俺」と太志の声がした。

姫乃はパックを取り、走って玄関まで行き鍵を開ける。


「どうしたの?」

姫乃は太志を入れて鍵を閉めた。

「暑い、水くれ」

冷蔵庫からお水のペットボトルを出して渡すと太志は一気に飲んだ。