朝から衝撃的な言葉を聞いてしまった亜矢は、学校でも上の空だった。
教卓から離れた席で担任教師である魔王を見つめるが、いつもの魔王だ。
亜矢だけが、グルグルと激しく思考を巡らせていた。
ふと、隣の席のグリアに視線を移す。
……特に反応はない。
(死神には…いや、あたしが言う事でもないし…)
もし、アヤメが亜矢だけに打ち明けたのであれば、誰かに話すべきではない。
いつかアヤメの口から話される事だろう。
何もかも独断で決めてしまうには、まだ情報が少なすぎる。
早く詳細が知りたい……と思っていると……
「オラァ!!亜矢、オレ様のありがたい授業を聞きやがれ!!」
魔王先生の一喝で、クラス全員の注目が亜矢に集まる。
「ちょ、ちょっと、やめてよ魔王!呼び捨てにしないでよ!!」
亜矢は反射的に、いつもの口調で魔王に返してしまった。
ハッ!と気付いて亜矢が赤面した時には遅かった。
魔王と亜矢の間で飛び交う言葉は親密で、禁断の仲にも見えてしまう。
……だが、それは『不良っぽい魔王』と『強気の亜矢』という性格が幸いした。
クラス一同が爆笑し、不審な目では見られなかったのが救いである。
グリアは机に片肘を突いて、呆れ顔をしている。
少し離れた席のリョウは、一同に合わせて静かに笑っている。
その頃、アヤメは自宅にコランを連れてきて、一緒に遊んでいた。
亜矢が学校に行っている間は、アヤメがコランを預かっているのだ。
……いや、正確には、アヤメがコランの母親なのだが。
昼前になり、アヤメがテーブルの上に置いてある弁当箱を見て声を上げた。
「あっ!!」
コランも一緒になってテーブルの上を見る。
「お母さん、どうしたんだ?」
「オランが持って行ったの、コランのお弁当!」
アヤメは毎日、魔王に愛妻弁当を持たせている。
それをコランが羨ましがったので、たまにコランにも弁当を作っているのだ。
サイズは違うが似た弁当箱なので、間違えて魔王に渡してしまった。
「コランのお弁当じゃ絶対に足らないよね…どうしよう」
「う~ん、オレも兄ちゃんの弁当、食べきれない……」
アヤメが時計を見て確認すると、もうすぐ学校は昼休みの時間。
教師として、人間界でも頑張って働いている夫の事を考えると……
「コラン、少しだけ一人でお留守番できる?」
「うん、できる!!一人でも大丈夫!」
「ふふっ、いい子」
アヤメは笑顔で自慢の息子・コランの頭を撫でる。
そして意を決して寝室に行くと、エプロンを外して着替えを始める。
(お弁当を持って行くから、待っててね、オラン)
このマンションから学校までは徒歩で行ける距離だ。まだ間に合う。
弁当を入れたランチバッグを手に持ち、玄関を出るアヤメの姿は――
その格好、その服装は――
なんと、亜矢の通う高校の制服だ。
ここから、さらに波乱の一日が始まる。
教卓から離れた席で担任教師である魔王を見つめるが、いつもの魔王だ。
亜矢だけが、グルグルと激しく思考を巡らせていた。
ふと、隣の席のグリアに視線を移す。
……特に反応はない。
(死神には…いや、あたしが言う事でもないし…)
もし、アヤメが亜矢だけに打ち明けたのであれば、誰かに話すべきではない。
いつかアヤメの口から話される事だろう。
何もかも独断で決めてしまうには、まだ情報が少なすぎる。
早く詳細が知りたい……と思っていると……
「オラァ!!亜矢、オレ様のありがたい授業を聞きやがれ!!」
魔王先生の一喝で、クラス全員の注目が亜矢に集まる。
「ちょ、ちょっと、やめてよ魔王!呼び捨てにしないでよ!!」
亜矢は反射的に、いつもの口調で魔王に返してしまった。
ハッ!と気付いて亜矢が赤面した時には遅かった。
魔王と亜矢の間で飛び交う言葉は親密で、禁断の仲にも見えてしまう。
……だが、それは『不良っぽい魔王』と『強気の亜矢』という性格が幸いした。
クラス一同が爆笑し、不審な目では見られなかったのが救いである。
グリアは机に片肘を突いて、呆れ顔をしている。
少し離れた席のリョウは、一同に合わせて静かに笑っている。
その頃、アヤメは自宅にコランを連れてきて、一緒に遊んでいた。
亜矢が学校に行っている間は、アヤメがコランを預かっているのだ。
……いや、正確には、アヤメがコランの母親なのだが。
昼前になり、アヤメがテーブルの上に置いてある弁当箱を見て声を上げた。
「あっ!!」
コランも一緒になってテーブルの上を見る。
「お母さん、どうしたんだ?」
「オランが持って行ったの、コランのお弁当!」
アヤメは毎日、魔王に愛妻弁当を持たせている。
それをコランが羨ましがったので、たまにコランにも弁当を作っているのだ。
サイズは違うが似た弁当箱なので、間違えて魔王に渡してしまった。
「コランのお弁当じゃ絶対に足らないよね…どうしよう」
「う~ん、オレも兄ちゃんの弁当、食べきれない……」
アヤメが時計を見て確認すると、もうすぐ学校は昼休みの時間。
教師として、人間界でも頑張って働いている夫の事を考えると……
「コラン、少しだけ一人でお留守番できる?」
「うん、できる!!一人でも大丈夫!」
「ふふっ、いい子」
アヤメは笑顔で自慢の息子・コランの頭を撫でる。
そして意を決して寝室に行くと、エプロンを外して着替えを始める。
(お弁当を持って行くから、待っててね、オラン)
このマンションから学校までは徒歩で行ける距離だ。まだ間に合う。
弁当を入れたランチバッグを手に持ち、玄関を出るアヤメの姿は――
その格好、その服装は――
なんと、亜矢の通う高校の制服だ。
ここから、さらに波乱の一日が始まる。