魔王は向かい側のソファに戻り、アヤメの隣に座った。
「あ~~でも、本当にキスしたくなっちまったな…どうするかなァ?」
わざとらしく言う魔王が向ける視線の先は、亜矢ではなくアヤメ。
まさか…と、亜矢は嫌な予感がした。
「亜矢、手本を見せてやる」
魔王がアヤメに視線を送ると、暗黙の了解なのか、アヤメが動いた。
体を魔王の方へと向けると、本能のまま求めるように……
アヤメは魔王に懇願してみせたのだ。
「オランのキスが欲しい……お願い、オラン。キスして……」
恥ずかし気もなく魔王の筋書き通りの言葉を次々と述べるアヤメに、亜矢はただ驚愕した。
……すでに『調教済み』のアヤメは、魔王に仕込まれていたのだ。
下手な演劇か、悪い夢でも見せられているようだ。
「上出来だぜ、アヤメ」
「オラン、好き……んっ」
魔王は満足げに笑うと、アヤメが言い終わる前の口を塞ぐように口付けた。
目の前で『自分自身』のキスシーンを見せられている亜矢は、もう我慢の限界だった。
膝の上で両手の拳を握り、怒りに震えていた。
(絶対に変よ、この二人!!おかしい、異常だわ!!)
そう心で叫ぶが、それが前世での『自分自身』と『愛した相手』なのだ。
それ以前に、死神との『口移し』だって端から見れば、大して変わらない。
亜矢は、二人の気が済むまでの時間を耐え抜いた後、ようやく本題を伝えた。
『亜矢とアヤメは今後、別々の魂となって、それぞれ転生する』
という、魔王とアヤメにとっては、これ以上ない朗報である。
それを聞いた魔王とアヤメは顏を見合わせて、二人とも驚きに声を失っている。
だが、次には抱き合って喜びに浸っていた。
色々あったけど、良かったなぁ…と二人を見た亜矢も一緒になって涙ぐんだ。
「じゃあ、あたしはこれで帰……」
と、言って亜矢がソファから立ち上がろうとした時だった。
「これで、亜矢も永遠にオレ様のモノだな」
「…………は?」
感動のシーンから一転。
魔王の口から出た、まさかの発言に亜矢は耳を疑った。
「え、どういう事……?」
恐る恐る聞き返す。どうか聞き間違いであってほしい。
「言ったろ?オレは亜矢を愛していると。魂が分かれようが同じ事だぜ」
「は?え!?お、おかしいでしょ、アヤメさんだけでいいでしょ!?」
もう、亜矢の混乱した頭では状況を処理しきれない。
どうツッコミ返していいのかも分からない。
来世ではハーレム、もしくは一夫多妻を狙っているのだろうか?
「魂が2つに分かれるなら、両方手に入れるまでだろうが」
当然の事のように主張する魔王。
(こ、この悪魔は……どこまで本気なの!?)
もうダメだ……。
魔王の独占欲とも言える持論は理解不能で、覆す事も不可能だろう。
死神の持論も意味不明だったが、魔王も同様であった。
亜矢の魂がいくつ分離しようが増えようが、魔王は全てを手に入れるつもりだ。
魔王に惚れられてしまった事が、終わりのない運命の始まりだった。
亜矢は来世の自分を想像して、今から気が滅入ってしまった。
この波乱からも決して逃れられない……永遠に輪廻するのだろう。
結局、魂をどうこうした所で、解決には至らないのだ。
だが、とりあえずの『幸せ』には至っている……はず。
魔王とアヤメは、夫婦として永遠に結ばれるのは間違いないのだから。
こうして役目を終えた亜矢は、ようやく自宅へと戻ったのであった。
少し奇妙な禁断の扉を開けてしまった感じもする今回の件。
明日からはまた、どのような日常が始まるのだろうか。
「あ~~でも、本当にキスしたくなっちまったな…どうするかなァ?」
わざとらしく言う魔王が向ける視線の先は、亜矢ではなくアヤメ。
まさか…と、亜矢は嫌な予感がした。
「亜矢、手本を見せてやる」
魔王がアヤメに視線を送ると、暗黙の了解なのか、アヤメが動いた。
体を魔王の方へと向けると、本能のまま求めるように……
アヤメは魔王に懇願してみせたのだ。
「オランのキスが欲しい……お願い、オラン。キスして……」
恥ずかし気もなく魔王の筋書き通りの言葉を次々と述べるアヤメに、亜矢はただ驚愕した。
……すでに『調教済み』のアヤメは、魔王に仕込まれていたのだ。
下手な演劇か、悪い夢でも見せられているようだ。
「上出来だぜ、アヤメ」
「オラン、好き……んっ」
魔王は満足げに笑うと、アヤメが言い終わる前の口を塞ぐように口付けた。
目の前で『自分自身』のキスシーンを見せられている亜矢は、もう我慢の限界だった。
膝の上で両手の拳を握り、怒りに震えていた。
(絶対に変よ、この二人!!おかしい、異常だわ!!)
そう心で叫ぶが、それが前世での『自分自身』と『愛した相手』なのだ。
それ以前に、死神との『口移し』だって端から見れば、大して変わらない。
亜矢は、二人の気が済むまでの時間を耐え抜いた後、ようやく本題を伝えた。
『亜矢とアヤメは今後、別々の魂となって、それぞれ転生する』
という、魔王とアヤメにとっては、これ以上ない朗報である。
それを聞いた魔王とアヤメは顏を見合わせて、二人とも驚きに声を失っている。
だが、次には抱き合って喜びに浸っていた。
色々あったけど、良かったなぁ…と二人を見た亜矢も一緒になって涙ぐんだ。
「じゃあ、あたしはこれで帰……」
と、言って亜矢がソファから立ち上がろうとした時だった。
「これで、亜矢も永遠にオレ様のモノだな」
「…………は?」
感動のシーンから一転。
魔王の口から出た、まさかの発言に亜矢は耳を疑った。
「え、どういう事……?」
恐る恐る聞き返す。どうか聞き間違いであってほしい。
「言ったろ?オレは亜矢を愛していると。魂が分かれようが同じ事だぜ」
「は?え!?お、おかしいでしょ、アヤメさんだけでいいでしょ!?」
もう、亜矢の混乱した頭では状況を処理しきれない。
どうツッコミ返していいのかも分からない。
来世ではハーレム、もしくは一夫多妻を狙っているのだろうか?
「魂が2つに分かれるなら、両方手に入れるまでだろうが」
当然の事のように主張する魔王。
(こ、この悪魔は……どこまで本気なの!?)
もうダメだ……。
魔王の独占欲とも言える持論は理解不能で、覆す事も不可能だろう。
死神の持論も意味不明だったが、魔王も同様であった。
亜矢の魂がいくつ分離しようが増えようが、魔王は全てを手に入れるつもりだ。
魔王に惚れられてしまった事が、終わりのない運命の始まりだった。
亜矢は来世の自分を想像して、今から気が滅入ってしまった。
この波乱からも決して逃れられない……永遠に輪廻するのだろう。
結局、魂をどうこうした所で、解決には至らないのだ。
だが、とりあえずの『幸せ』には至っている……はず。
魔王とアヤメは、夫婦として永遠に結ばれるのは間違いないのだから。
こうして役目を終えた亜矢は、ようやく自宅へと戻ったのであった。
少し奇妙な禁断の扉を開けてしまった感じもする今回の件。
明日からはまた、どのような日常が始まるのだろうか。