リビングを見た亜矢は、唖然とした。
煌びやかな金属と宝石で装飾されたアンティーク調のテーブルや椅子の数々。
どう見ても、これは魔界の城から持ち込んできた、メイド・イン・魔界の家具だろう。
よく見ると同じマンションにしては、亜矢の部屋よりも広い。
どういう原理なのか、空間をも広げて優雅な暮らしをしている。
……どれもこれも、魔王が成せる魔法なのだろう。
そのリビングにある豪華なソファに魔王は座っていた。
「よぉ、亜矢。よく来たな。まぁ、座れ」
魔王はソファにもたれかかり、テーブルを挟んだ向かい側のソファに座るように促した。
「その前に、アヤメさんのエプロンの下に服を着させなさいよ」
「あぁ?よく見ろよ、服なら着てんだろ」
「下着は服じゃないわよ」
亜矢が静かな怒りを言葉に込める。
本当は平手打ちをお見舞いしたいのだが、当たらないのは目に見えている。
「仕方ねぇな。アヤメ、着替えてこい」
「はーい」
アヤメは素直に明るい返事を返すと、着替える為に別室へと向かった。
魔王の一言で、アヤメは簡単に動く。思うがままだ。
日々、魔王に調教されているアヤメは、どれだけ従順なのか……。
やがて、普通のTシャツとスカートに着替えたアヤメが戻ってきた。
アヤメは当然、魔王の隣に座る。そして必要以上にピッタリと寄り添う。
さすがは魔王の貫禄。その堂々たる姿は、まさに玉座に座る王と王妃だ。
(あぁ……何を見せられているのかしら、あたしは………)
亜矢は言われた通りに正面のソファに座るも、目の前の光景に目を逸らしたくなってしまった。
まさに『自分自身が魔王とイチャついてる』様子を正面から観覧しているようなものだ。
本来の目的を果たす前に、すでに帰りたくなってしまっている。
すると魔王が、さらに追い討ちをかけてきた。
「なぁんて顏してんだよ?いいぜ、亜矢。一緒に可愛がってやるぜ……来な」
魔王と同じソファの、アヤメとは反対側に座るように促してきたのだ。
(なに……?この人はハーレム気分でも味わう気なの!?)
当然ながら、そんな下心の誘いに乗る気なんて起きない。
だが、なんとアヤメが乗り気になった。
「亜矢さん、オランはキスもすごく上手なんですよ」
「ちょっ……!?アヤメさん、何言って……!!!」
望んでもいない情報を照れながら口にするアヤメに、亜矢は度肝を抜かれた。
前世の頃に何十年間も毎日、魔王とキスを交わしたアヤメが言うと信憑性がある。
というか、生々しい。恐ろしい程にリアルである。
……今でも毎日、キスしているのは間違いない。
……人の事は言えないが。
(って、なんで、アヤメさんもグルになって誘ってんの!?)
というか、妻の目の前で別の女も誘う夫も、夫の目の前で別の女を許す妻もどうなのか……?
いや、亜矢とアヤメは同一人物と考えれば浮気でもないし、これが当然なのか?
魔王はアヤメを妻としながらも、亜矢を手に入れたいという野望は今でも変わっていない。
アヤメは魔王を夫としながらも、亜矢を『自分自身』だと認識しているので不思議に思わない。
アヤメの魂は、亜矢の中にあるからだ。
………この状況、やはり何かが、おかしい。
「亜矢も、オレ様とのキスが忘れられねえから来たんだろ?」
「……あ、あれはキスじゃないし!今日の目的も違うからっ…!」
確かに、前世の記憶の『覚醒』と『封印』の儀式の時、魔王と口付けを交わした。
だが、あれは『儀式』だ。キスと言うならば、その2回だけだ。
「じゃあ、なんだ?オレ様よりも、あの死神のキスが『うまい』ってのか?」
「えっ……!?」
亜矢は言葉を詰まらせた。
キスが、うまい…?
それは『上手い』、それとも『美味い』なのか??
魔王との2回のキスで、上手いも下手も、美味いも不味いも、判別なんて出来ない。
……というか、どちらも味わっている場合ではなかったし……。
それ以前に、グリアとは1年以上『口移し』という名のキスを交わしているが、味わった事などない。
……なんて、真剣にキスについて考えている場合でもなかった。
煌びやかな金属と宝石で装飾されたアンティーク調のテーブルや椅子の数々。
どう見ても、これは魔界の城から持ち込んできた、メイド・イン・魔界の家具だろう。
よく見ると同じマンションにしては、亜矢の部屋よりも広い。
どういう原理なのか、空間をも広げて優雅な暮らしをしている。
……どれもこれも、魔王が成せる魔法なのだろう。
そのリビングにある豪華なソファに魔王は座っていた。
「よぉ、亜矢。よく来たな。まぁ、座れ」
魔王はソファにもたれかかり、テーブルを挟んだ向かい側のソファに座るように促した。
「その前に、アヤメさんのエプロンの下に服を着させなさいよ」
「あぁ?よく見ろよ、服なら着てんだろ」
「下着は服じゃないわよ」
亜矢が静かな怒りを言葉に込める。
本当は平手打ちをお見舞いしたいのだが、当たらないのは目に見えている。
「仕方ねぇな。アヤメ、着替えてこい」
「はーい」
アヤメは素直に明るい返事を返すと、着替える為に別室へと向かった。
魔王の一言で、アヤメは簡単に動く。思うがままだ。
日々、魔王に調教されているアヤメは、どれだけ従順なのか……。
やがて、普通のTシャツとスカートに着替えたアヤメが戻ってきた。
アヤメは当然、魔王の隣に座る。そして必要以上にピッタリと寄り添う。
さすがは魔王の貫禄。その堂々たる姿は、まさに玉座に座る王と王妃だ。
(あぁ……何を見せられているのかしら、あたしは………)
亜矢は言われた通りに正面のソファに座るも、目の前の光景に目を逸らしたくなってしまった。
まさに『自分自身が魔王とイチャついてる』様子を正面から観覧しているようなものだ。
本来の目的を果たす前に、すでに帰りたくなってしまっている。
すると魔王が、さらに追い討ちをかけてきた。
「なぁんて顏してんだよ?いいぜ、亜矢。一緒に可愛がってやるぜ……来な」
魔王と同じソファの、アヤメとは反対側に座るように促してきたのだ。
(なに……?この人はハーレム気分でも味わう気なの!?)
当然ながら、そんな下心の誘いに乗る気なんて起きない。
だが、なんとアヤメが乗り気になった。
「亜矢さん、オランはキスもすごく上手なんですよ」
「ちょっ……!?アヤメさん、何言って……!!!」
望んでもいない情報を照れながら口にするアヤメに、亜矢は度肝を抜かれた。
前世の頃に何十年間も毎日、魔王とキスを交わしたアヤメが言うと信憑性がある。
というか、生々しい。恐ろしい程にリアルである。
……今でも毎日、キスしているのは間違いない。
……人の事は言えないが。
(って、なんで、アヤメさんもグルになって誘ってんの!?)
というか、妻の目の前で別の女も誘う夫も、夫の目の前で別の女を許す妻もどうなのか……?
いや、亜矢とアヤメは同一人物と考えれば浮気でもないし、これが当然なのか?
魔王はアヤメを妻としながらも、亜矢を手に入れたいという野望は今でも変わっていない。
アヤメは魔王を夫としながらも、亜矢を『自分自身』だと認識しているので不思議に思わない。
アヤメの魂は、亜矢の中にあるからだ。
………この状況、やはり何かが、おかしい。
「亜矢も、オレ様とのキスが忘れられねえから来たんだろ?」
「……あ、あれはキスじゃないし!今日の目的も違うからっ…!」
確かに、前世の記憶の『覚醒』と『封印』の儀式の時、魔王と口付けを交わした。
だが、あれは『儀式』だ。キスと言うならば、その2回だけだ。
「じゃあ、なんだ?オレ様よりも、あの死神のキスが『うまい』ってのか?」
「えっ……!?」
亜矢は言葉を詰まらせた。
キスが、うまい…?
それは『上手い』、それとも『美味い』なのか??
魔王との2回のキスで、上手いも下手も、美味いも不味いも、判別なんて出来ない。
……というか、どちらも味わっている場合ではなかったし……。
それ以前に、グリアとは1年以上『口移し』という名のキスを交わしているが、味わった事などない。
……なんて、真剣にキスについて考えている場合でもなかった。