あんなに過酷な真実を知ってしまった後でも。
夢にも思わなかった、死神とのデートの後でも。
望まない前世の記憶が覚醒してしまった後でも。
今日も玄関のドアを開ければ、そこに待っているのはいつもの日常だった。
この日常は、もはや『運命』でさえも崩す事の出来ない『絆』なのだろう。






いつもの朝。
制服姿の亜矢は玄関から出て、すぐに目の前にグリアの姿を見付けた。
あぁ、いつも通りだ……という確かな安心感を覚えた。

「しつこいわね、あんたも。毎日毎日、朝っぱらから待ち伏せして」
「オレ様にとっては死活問題なんでね」
「おにぎりでも食べてなさいよ」

いつもの強気な亜矢を見て、口にも表情にも出さないが、グリアも安心したようだ。
完全に、いつもの亜矢に戻っている。そう感じたのだ。
その時、少し遅れて隣の部屋から外に出て来たリョウが、二人を見付けた。

「おはよう。今日も仲いいね。この前、デートしてたくらいだしね」
「…………」

亜矢とグリアは同時に固まった。
思い出したくもない、デートとも呼べないアレを…まさか見られていたとは。
リョウは二人の反応を見ても不思議に思わずに微笑んでいる。
……天使なのに、何故ここで空気を読まないのか。
その発言がどれだけ二人の羞恥心を煽るか、気付いていない訳がない。

「リョウッ!!」
「リョウくんッ!!」
「わぁ、息ピッタリだね☆」

実はリョウも、しっかり嫉妬していたのかもしれない。






運命も、輪廻すらも越えて。
これからもまた、いつもの日々が続いていくのだ。