校舎を出て外の道に出ても、グリアは亜矢の片腕を掴んだまま、早歩きで先導して歩く。
そろそろ抵抗などしそうな頃だが、亜矢は何も言わない。
亜矢は自分を引っ張るグリアの腕と、何も言わず前を向いて歩く死神を交互に見た。

………なんか、嬉しい気がする。

そう思った瞬間、心を読まれたかのように、グリアが突然振り返った。
いつもの、睨みつけるような柄の悪い態度で。

「何笑ってんだよ」
「ふふ……べつに……?」

グリアは照れ隠しなのか、すぐにまた前を向くと、亜矢を掴んだ腕の力を少しだけ緩めた。
そして、その手を亜矢の手の平へと辿るように移動させて握った。
歩むスピードも、亜矢に合わせるかのように少し緩やかになった。




もうすぐ、自宅マンションが見えてくる。
誰かに見られたら、すごく恥ずかしいけれど。
後もう少しだけ…だから…今日はこのまま……
死神と手を繋いで一緒に帰ろう。






アヤメであった過去と、亜矢である現在。
どちらも、本当の自分ではある。
だが、自分らしく居られる場所、自分が還るべき場所とは何処なのか。
それは、きっと『亜矢』と『アヤメ』では別々の場所なのだろう。
『亜矢』の中で、少しずつ答えが見え始めてきた。